銀時に言われて厚手のタオルケットを余分に敷いた。
「俺、こんな緊張すんの生まれて初めてかも」
向かい合わせに寝転んで新八は銀時の腕の中に抱き込まれている。
掌が背中を撫でてくれるのが温かくて気持ちいい。
「銀さんでも、緊張するんですか?」
「新八君……常々思うんですけど。君は銀さんを人間だと思ってない節があるんじゃないですかね?」
いわれて、そういえばあまり人間扱いしていないかもしれないな、とふと思う。
人間扱いしていない、というよりは、常人扱いしていない、という方が正しいのだけれど。
「そんなことないです」
「そんなことあるんですけど……」
「気のせいです」
「……」
「あ……」
布をくぐった銀時の手に直接尻を鷲掴みにされた。
胸元にしがみ付いて顔を上げたらにやりと笑われた。
「新八、ケツちっせーよな」
そんな事を言われても、顔が熱いばかりで何も言えなかった。
額をつけた銀時の胸は自分の薄い身体とは全然違って。
この身体に自分は抱かれるのだ。
「いいか?」
旋毛に当たった唇にそっと聞かれて。
新八の中にある応えは一つだけだったから、ただ一言「はい」と答えた。
起き上がった銀時が一度髪を撫でてくれる。
「新八、あっち側向け」
ころりと転がされ、左側が下になるように動かされた。
裾が捲られ、銀時の手が尻に触れて。
怖くて枕を引き寄せ腕に抱いた。
銀時が怖いのではなく、純粋な未知への恐れ。
子供みたいに身体を丸める。
「そのままにしとけ。あぶねーから動くなよ」
「……はい」
尻の肉を割られそこが冷やりと外気に触れる。
同時に銀時の目にも触れているのだと思うと身体に力が入るのを止める事ができない。
こんな場所を誰かの目に晒す日が来るなんて思わなかった。
「ぎ、銀さん……」
枕を抱き締める腕にも力が入る。
「大丈夫だ、まだなんもしねーから」
安心させるような声の後、丸みの辺りにチュッという軽い音と感触。
「キス……した?」
「したよ?」
「だ、だってまだお風呂入ってない……」
「ばっか、お前、俺は新八の尻なら食えるぞ」
言い終わると同時にかぷりと軽く噛まれた。
「何してっ……やっ、そんなんしなくていいですってばっ」
柔らかい部分を何度も甘噛みされてゾクリとする。
「やだっ、もーホント、あんた馬鹿でしょっ」
「さっき馬鹿だっつったじゃん」
「馬鹿っ」
銀時の歯が当たる部分がくすぐったくてむず痒い。
新八は軽く身を捩った。
わざとふざける銀時のおかげで少し身体の緊張がほぐれた気がした。
「ほれ、入れるぞ」
ぺちりと軽く叩かれた。
「う……はい」
薬の容器が宛がわれる感触。
「いいか、深呼吸しとけ。吐いて、吸って、でゆっくりな」
言われた通りに大きく息を吐く。
吐いて、吸って、吐いて。
その間銀時は容器を宛がったままで動かさないでいてくれる。
ゆっくりと呼吸を繰り返していると少しずつまた緊張がほぐれていくのがわかる。
「息、吐いた時に入れっから」
「は、はい……」
銀時の静かな声に呼吸も自然に繰り返せた。
何度目かに息を吐いたとき、そっと何かが挿し込まれる。
「ふ……」
痛みはなく、あるのは僅かな違和感だけ。
「大丈夫か?」
「ん、大丈夫……です」
「薬、入れるぞ?」
銀時の顔を見てコクリと頷いた。
挿入された物の先端から液体が流れ込んでくる。
お湯に入れて薬を温めてくれたから冷たくはない。
全ての注入が終わると、異物がそっと抜かれた。
「終わったぞ」
容器の始末をした銀時が傍らに寝転んで、そっと抱きこんでくれる。
その片手は尻に回されて、薬が流れないようティッシュでおさえてくれていた。
「辛いかもしんねーけど、もう少し我慢してくれな」
向かい合わせで、下にした自分の腕を枕にするようにして新八の頭を抱き締めてくれる。
「全部、俺の所為にしていいから」
髪にたくさん唇が触れて。
「恥ずかしいの、全部俺の所為にしていいから」
頭に回された指先が米神を掠めて。
「俺のもんになってくれて、ありがとな」
新八はしがみ付いて首を振った。
こんなにも面倒な事をしてまで自分の事を欲しいと思ってくれることがただ嬉しくて。
心から、銀時の事が好きだと思った。
けれど、一つだけ気になる事があって。
「銀さん」
「ん?」
「あの……男の人と、したことあるんですか?」
あまりにも全ての事に慣れている気がして。
「まーさか。あるわけねぇよ。男のケツに突っ込みたいなんて思うわけねぇじゃん」
「でも……やり方とか」
「ケツ使うのなんて別に珍しかねーよ。男限定って訳じゃねーし」
「そ……なんですか……」
「でも銀さんは未経験よ?面倒くせーしな。長く生きてっと、無駄に知識は身に付くわけよ。新ちゃんだからここまですんの」
銀時に女性経験があるのは当然の事だし仕方がないと思っている。
だからこそ、特別なのだといわれた気がして嬉しくなる。
「昔よ、子守の依頼が来てな。子守っつっても赤ん坊じゃなくてやんちゃなガキでよ。そいつが便秘症だからって母親に浣腸の仕方レクチャーされちまってよ。まさかこんなとこで役に立つとはな……って訳だ。安心した?」
「う……」
心の中を見透かされたみたいで恥ずかしい。
でも、本当の事を話してくれる事が嬉しかった。
「新八の穴、すげー可愛かった」
「なっ…… 」
人が折角安心してるのに。
いつだって無駄に一言多いのだ。
きっと照れ隠しなのだろうけれど。
「ホントに馬鹿……だけど、好き……です」
「馬鹿はいらなくね?」
「オプションです」
「じゃあ無しの方向で」
「……馬鹿」
頭の上で情けないため息が聞こえたけれど。
抱き締めてくれる腕は相変わらず優しかった。
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