言葉が声に。
声が音に。
耳に届く喧騒が、銀時の中で少しずつ意味のないものへと変わっていく。
自分の周りを取り巻く音の渦。
グルグルと巡るそれが鼓膜を滑ってぽつりと自分を弾き出す。
手酌の酒は味気なく、煽ってみても舌に苦い。
意味をなくした音の洪水がゆっくりと銀時を呑みこんでいく。
そっと息を吐いて。
銀時は立ち上がり静かに席を外した。
どちらかといえば多分、器用な方だと思う。
けれど時々、上手く人と繋がれない。
道を失くした迷子のように帰りかたがわからない。
障子を一枚隔てるとざわめきが少しだけ薄くなる。
夕風が頬に涼しかった。
「銀さん」
喧騒の隙間を縫って背後から声が届く。
それはいつも真っ直ぐに、間違える事無く銀時を呼んでくれる。
縁側に座った自分の隣、新八が小さな身体をごく自然に並ばせた。
「主役が抜け出してなにやってんですか」
見上げて、呆れたように言い募る。
「あいつらは飲んで騒げりゃなんだっていいんだって、それに……」
「?」
「新ちゃん、お酌してくんねぇからつまんねぇし」
「……我が侭」
「いーまーさーらー」
ぽすんと、隣の膝に頭を載せた。
「……甘えん坊」
「新ちゃんにだけよ?」
見上げれば、頬が染まる。
「ばか」
口元は拗ねるけれど。
「銀さん……」
声が許してくれるのがわかる。
「ん?」
頭に添えられた新八の手があやす様に髪を撫でた。
「お帰りなさい」
慈しむように降り注ぐ眼差しは銀時の、道標。
「……ただいま」
新八の存在は闇を照らす導のようにいつだって銀時の中で光っている。
そこが自分の帰る場所だと教えてくれる。
「お帰りのちゅーは?」
甘えるように請えば新八は、一瞬目を見張りすぐに微笑む。
「そんなの」
丸い頭に伸ばした手の平。
それを銀時が引き寄せる前に。
「したいに決まってんでしょ」
新八の唇が降ってきた。
触れるだけの優しい温もり。
心も身体も声すらも。
新八の全ては銀時に甘い。
甘くて甘くて堪らなくて。
酒よりも遥かに心地よく身体を巡る新八を、銀時はまるで酔うように感じていた。






この話は「湯気ゆら」(携帯の機能によっては見られるかもしれないのでリンク繋げておきますねv)の東ジャミー様が描かれた漫画に触発されて本能の赴くままに書いてご本人に送りつけたものです。
ありがたい事にジャミーさんのサイトに飾っていただいております。
私もずうずうしくもジャミーさんの作品を持ち帰らせていただいてサイトに飾らせていただきました。
サイズの関係で携帯ではご覧いただけないのでフレーム版のみの展示となっておりましたが、今回フレーム版にもこの文を読めるようにリストに加えましたので、ジャミさん作をご覧になったことがなければ是非こちらから素敵漫画をどうぞご堪能くださいませvvv
そしてジャミーさん宅へ是非是非v
もうすっごい倖せに溢れてるんですよーv
ジャミーさん、素敵なインスピレーションをありがとうございましたv

20100610
20150804加筆&リンク修正 
もんぺ