この作品は「千石」の小丸さんの記念すべきオフ第一冊目「狙撃手」にゲストとして呼んで頂いた時のものです。
発行は2007年。
既に完売。
再版の予定無し。
ネタがサイト3Z。
という点から、今回許可をいただきましてサイトUP致しました。
4年近く前の作品ですが、少しでも楽しんでいただけたら嬉しいです。
極僅かですが、加筆修正しております。


















オッス、オラ坂田。
銀魂高校で現国教師やってます。
三年生の受け持ちですが、一年生に大っぴらに自慢したいような、誰にも見せたくないような、もっそい可愛い恋人がいたりします……が、今んとこ内緒。
多分(いや絶対……か)ばれたら免職です。
あー、なんだ、自己紹介はこんなもんでいい?





いつも通りの朝。
結構さわやか。
風薫る、みたいな?
俺はチャイムが鳴る五分前に校門を通り抜ける。
校庭に人影はない。
「おはよーございますぅ」
職員室のドアを開けたらその音に反応してほぼ全員が俺を注目する。
もうね、なんかあれだよ。
またですか?みたいな、呆れ半分諦め半分、可哀想な人を見る目になってる。
慣れてるからどってことねーけどな。
でも今日はその目が三対多かった。
教頭机の前に立った教頭と、隣に並ぶ知らない三つの顔。
男、男、女。
初めて見る顔。
ここが教室で、ここにいるのがクラスメイトならシチュエーション的には転校生?ってとこかね。
別に興味も無いから俺はさっさと席につく。
したら教頭がわざとらしい咳払いをした。
ウォッホン、とか言っちゃってるよ。
漫画ですか、このやろう。
「坂田先生、あと五分早く家を出られたらどうですかな。遅刻は生徒に示しが付きませんぞ?」
いやいや、未だ始業チャイム鳴ってないからセーフじゃね?
こっちこそ、頭にそんな卑猥なもんつけた人間(前から不思議なんだけど、この教頭とちびデブの校長って人間なわけ?)に示しが……とか言われたくないんですけどね。
その頭からニョキっと生えてる猥褻物は一体何なわけ?チャームポイントとか前に聞いた事あるけどかなり疑わしいよな。
「どーもすんません。横断歩道を渡れないお年寄りを背負ってちょっと善行を施してたら遅れちゃいました」
毎日繰り返す適当な言い訳を今日も口にして、俺は机に頬杖をついた。
忌々しい、みたいな顔されちゃったけど関係ねぇし。
「あれ、誰なの?」
教頭と俺のやりとりを、不思議そうに眺めてる新顔を見ながら、斜め前に座る近藤先生に質問タイム。
「教育実習生だそうですよ」
「へぇ」
善良が服着て歩いてるみたいな近藤先生があっさりと教えてくれた。
なーる程ね。
教育実習生か。
そういや俺にもそんな頃があったっけね。
教育実習生と生徒の恋ってありがちだよな。
自分で言うのもなんだけど、俺って結構人気あったのよ?
まあそん時何かがあったかどうかはムニャムニャ、って事にしとくけど。
もしその頃に新八に会ってたらどうだったんだろうかとかちょっと思いを馳せちまう。
新八、は志村新八。
俺が受け持ってるクラスの志村妙の弟だったりするんだけども(ついでに言うなら斜め前の近藤先生が担任な)なんとビックリ、秘密の自慢の恋人だったり。
弟なら男じゃないのっ?とか言うのはノータッチで。
そういうの、ナンセンスっての?だから。
俺達ラブラブ(はい、そこ引かない)。
まぁ年の差実に……んん?いくつだ?や、まぁそこもノータッチでいこうかね。
実習生の頃だったら俺だってそれなりに若かったし年の差だってそんなにない筈。
けど、今でよかったのかも知んねーなとも思う。
あの頃だったら新八の事傷つけるしかできなかったかもしれねぇし。
多少なりとも人間が出来てる今でよかったのかもな。
情けねぇけど、あの頃の俺だったら好きになってもらえた自信はねんだよなー。
勿論今だって自信はねぇし、日々努力なんだけども。
ホント、今でよかった。
新八も俺でいいって言ってくれてるし。
今この時に出会えたのは運命ってやつ?……って、あれ、俺乙女?
「ウォッホン」
あ、また漫画咳払い。
「坂田先生、聞いてますかな?」
ああ、すんません、全く聞いてません。
「もっちろん、耳の穴かっぽじって聞いてますよぉ」
疑わしいってのを隠そうともしない目が見てっけどどーでもいい。
早く終わってくれって。
「全員揃ったようなので」
ぎって一度俺をにらんでから教頭は新人三名を一歩前に出した。
「今日から教育実習生としてこの学校に来ることになった、田中一郎君、鈴木太郎君、猿飛あやめさんの三名だ。三週間という短い期間ではありますが、皆さんしっかりと面倒を見てあげるように」
まぁよく言えば初々しいって感じの三人の名前を順番に羅列して教頭は簡単な紹介を済ませた。
なんか男は両方「日本太郎」みてーな名前だな。
女のほうはまぁ美人の部類に入んじゃねーの?
男子生徒が喜びそうなスタイルしてるし。
俺は今そういうの全っ然興味ないけどね。
頬杖付きながらぼんやり眺めてたらその紅一点の猿飛とかいうのにもっそい見られてることに気が付いた。
目を細めて、ガン飛ばしてんの?ってくらい俺を見てる。
あん?俺なんかしましたかぁ?
対抗して俺もめっちゃガン見してやったら手が胸元を探って何かを取り出した。
赤いフレームの眼鏡。
あるなら最初からかけとけよっ……って思わず脳内ツッコミ。
舌打ちの勢いで少し視線が強くなっちまった。
途端に女の頬が赤らんで。
何、こいつ、キモイ。
正直な感想だった。
「あのっ、あのっ、教頭先生っ。あそこの席の素敵な銀髪の方はどなたなんですか?」
身体をくねくらせながらビシッと俺を指差して、掴みかからんばかりの勢いで教頭に詰め寄る猿飛に俺の顎は手からずり落ちた。
「さ、猿飛さん……?」
様子の可笑しい女に流石の教頭も戸惑ってるみたいだ。
「今日初めて会ったのに、あんなに強い視線で見つめられて、もうっ、もう、私どうしたらいいのかしらっ。もしかしなくてもこれって運命なんじゃないのっ?、ううん、落ち着いて、落ち着くのよさっちゃんっ」
…………うん、マジで落ち着けば?
ちょ、まじでこの女キモイんだけど、何なわけ?
俺、ロックオン?
もっそい迷惑なんだけど。
「ああっ、なんて蔑んだ目で私を見るの。そんな強い視線初めて。私っ、私、もうっ」
「猿飛さん、猿飛さんっ、良いからちょっと落ち着きなさい。ここ学校だから、ね?君スレスレだから、ね?」
この学校、大概いろんなことが緩いけど、こういうタイプははじめてかもな。
つか、俺が言うのもなんだけど、こいつ教師にしても良いの?
「私、是非この方のクラスに入りたいんですけどっ」
いや、断固お断りします。
「さ、猿飛さん、君はもう近藤先生のクラスに決まってるから」
は?
ちょ、近藤先生って……こいつ、新八のクラスに入れんの?
ありえねぇんですけど。
誰が決めたの、ねぇちょっと。
頼むよ、おい。
俺は精一杯懇願するような視線で近藤先生を見た。
あんただけが頼りですから。
できることなら志村交換したい。
姉ちゃんとトレードしてくんねぇ?
かなわぬ望みと知りながら、俺は力いっぱい心の中で祈らずにはいられなかった。
わかってんだかないんだか、まっかせて下さい!みたいにニッと笑った近藤先生の白い歯だけがいつまでも脳裏に残ってた。



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