向かい合わせにしがみ付いた身体がゆっくりと落ちていく。
俺を跨いだ新八の腰がそろそろと近付いてくるのを感じる。
触れる胸元から伝わる鼓動。
「ふ……」
撫でた背中が少し震えて、耳元で吐息みたいな声が零れた。
時間をかけて十分に馴らした、とはいえやっぱ大事なのは気持ち。
我慢はしたくない、けど無理強いもしたくない。
だから急がずに、新八のペースで進めてやるのが一番いいんじゃないかと思う。
「無理だと思ったら止めろよ?」
「は……い」
肩先から膝裏まで。
新八を落ち着かせたくて何度も何度も手の平を往復させる。
腰を過ぎて尻、股を辿ると肌がヌルついた。
新八の中を濡らしたローションが溢れ伝って流れ落ちる。
それを太ももに塗り広げて、そのまま戻した手の平で小さい尻を鷲掴んだ。
「ひぁっ……」
下半身の安定の為にしがみ付いた腕を解けない新八が耳元で声をあげる。
「な、に……」
「ん?広げた方が挿れやすいから」
「そ、なんですか?」
「ま、な」
新八の尻が先端に当たる。
その感触に新八がぴくりと怯えた。
「先生、怖い……」
「大丈夫」
肉を広げて目的の場所に自分を宛がって。
「ほら、ここ」
「んっ……」
「ゆっくり息して、お前のタイミングで構わねぇから腰下ろせ」
目の前にある無防備な肩に口付ける。
歯を立てると新八が細く鳴いた。
「ぁ……あ……」
何度も呼吸を繰り返し、新八が少しずつ俺を呑み込んでいく。
先端を包む熱に眩暈。
うわ、やべ……すげぇ熱い。
「……あっ」
一番太い部分を呑み込んじまうと後はスムーズだ。
新八の中を濡らすローションとゴムのゼリー、二つの相乗効果もあって滑るように潜っていく。
俺を包む熱い締め付けはハンパねぇ。
ちょ、これ……くそっ、我慢できっかな。
急にスムーズになった挿入に驚いた新八がぎゅっとしがみ付いて動きを止めた。
「や、だ……先生、入っちゃう……こ、わい……」
「怖くねぇ、怖くねぇ」
背中を撫でながら俺が前に屈むとしがみ付いた新八の身体は少しずつ沈む。
「ゆっくり、息してろ」
「ん……」
落ち着かせながら呼吸を合わせて静かに下ろした。
身体が落ちきって俺の上に体重が載る。
根元まで、全部新八の熱に包まれた。
「入れたぞ、新八ン中」
自力で解けない腕を外してやって顔を見る。
「先生……ど、しよ……先生が……中、入って……」
「うん、新八ン中、入ってる」
「う……う……」
緊張で小刻みに震える新八の身体を引き寄せる。
抱き締めた肌は温かかった。
「大丈夫だ、新八。落ち着くまでずっとこうしててやっから」
髪を撫で、時々肌に口付けて。
「どうしても怖かったら、なんもしねぇでこのまま抜いてやるから心配すんな、な?」
「でも、それじゃ……」
「俺はいいから」
「そんなのやです。先生にも、気持ちよくなって欲しい、のに……」
「あんな、新八の中に入ってるって思うだけでどんだけ……ちょい待ち……っ」
溶かされそうな熱に包まれて、すげー気持ちよくて、めっちゃ馴染んでたそこに新八の意思とは無関係に内壁が動いて。
腕の中の身体をぎゅっと抱き締めた。
けどそのままやり過ごすには波が大きすぎて、俺は急いで根元を押さえた。
これ、きっつ……いんですけど。
「先生、大丈夫……あっ」
俺の我慢が新八の中でドクリと脈打って、内壁から鼓動を伝えた。
あっぶね。
驚いてる新八に額を寄せて。
「わり、センセーイきそうになっちまった」
「我慢しなくても……」
「まあまあそれは、な」
上目遣いの黒い視線はもの言いたげではあったけど。
「先生も……ちゃんと気持ち良くなって、くださいね……」
それだけ言って首元に擦り寄った。
「心配しなくても、すげぇ気持ちいいよ」
「うん……」
新八の体温がじわりと沁み込んだ。
俺の最初は15の時で、お水やってるネェちゃんだった。
部屋に転がり込んで、多分続いたのは半年くらい。
もう顔も覚えてねぇけど……一つだけ思い出す。
最後の夜に言われた言葉。
『坂田君、腰を振るだけがセックスじゃないのよ?』
言われた時は意味が分かんなくて、分かんねぇままずっと来ちまったけど。
今ならわかる。
めちゃめちゃ好きだと思う相手が腕の中にいて、繋がったとこから一つになっちまいそうなくらいに体温が溶け合ってく。
ただそれだけで満たされる行為。
これがそういうことなんだって。
新八に会わなかったら知らないままでいただろうけど。
本当に好きな相手とするセックスは身体以上に心が満たされる。
自分より、相手を良くしてやりたいって思う。
でもって、一緒によくなりたいって。
「新八、どんな感じ?」
大分落ち着いた様子に声をかけてみる。
「なんか……変な感じです」
変、か。
まぁ、何度か指は挿れてみてたけどまだ開発はしてねぇもんな。
「痛みは?」
フルフルと首を振って。
「ないです」
「そか」
痛みもなくて大分馴染んでる、か。
もう動いても大丈夫そうだけど……多分まだ後で感じんのは無理だろーな。
「新八、もっかいイかせてやるよ」
「え?」
萎えてた新八に指を絡めて何度か擦ると芯が通る。
「あっ」
後で感じられねぇなら辛いばっかの行為になっちまうかもしんないし。
まず気持ちいい事だけいっぱいしてやりてぇし。
「やっ……あっ……」
先端に滲み出す液を指先で押し込むように塗りこめる。
「んっ……」
ゆっくりと始めてだんだん早く。
強弱をつけて抜いてやる。
イかせるためだけに擦りあげる動きは新八をいつもより早く導いた。
「せ、んせ……離して……も、出ちゃい、ます……」
新八が拒むように腕を掴む。
「それ目的だから、出していいって」
「や、だ……あっ……んっ……」
「なんで?」
頑ななのが可愛くて。
滑りの良くなった動きに加速をつけて一気に最後に向かわせた。
「んっ……ぁっ……だ、めっ……先生に、かかっちゃ……あぁっ……」
その瞬間新八は俺を庇って、伏せるように身体を丸めた。
荒い息に上下する背中。
肩を丸く撫でる。
首を辿って上げさせた顔は上気して綺麗な薄紅に染まってた。
俺に対する気遣いは胸元を流れ落ち、弾けた飛沫が顎と口元を濡らした。
「んなこと気にする必要ねぇのに」
「だって……」
唇を寄せてそっと伸ばした舌を新八は拒まなかった。
顎と口元を舐め取ったそれを口付けに変えれば唇が開く。
誘う仕草とは裏腹なぎこちない舌の動きは俺をただ喜ばせた。
キスの余韻にぼんやりとしてる新八の膝裏に腕をかけて、身体を支えてやりながらゆっくりと後ろに倒す。
手近にあった座布団を折って持ち上がった腰の下に置いてやった。
高さが安定する代わりに繋がった部分が見え過ぎて、多分それが嫌な新八は顔を手で覆った。
「新八、顔見せて」
隠したままの顔を横に振る。
「見えねぇと寂しいんですけど」
「だって……」
「ここ」
俺を呑み込んでいっぱいに広がった穴の淵を指の腹で辿る。
「や、んっ……」
「丸見えなのに、顔だけ隠しても意味ねぇじゃん」
「……見てる先生が、見えるのが恥ずかしい、んです」
「その恥ずかしがってる顔もくれるんだろ?」
「う……」
誕生日をちらつかせると新八は、戸惑いながらも素直に顔を見せてくれた。
濡れた黒は揺らめきながら真っ直ぐに俺を射抜く。
「ずりぃのはわかってっけど……お前の事、全部欲しいから」
「先生……」
濡れた胸元を塗り広げて、あたる突起を指先で撫でる。
「ん……」
ヌメリを借りて何度も捏ねると新八自身がまた勃ち上がった。
「そろそろ……」
腰を掴んでゆっくり引くとスルッと抜ける。
「あ……ぁ……」
ぎりぎりまで出してまた挿れると先端が狭い肉を押し開いた。
これ、マジでやべんだけど。
「いけそうか?」
顔の両脇に手をついて新八を見下ろす。
「だ、いじょうぶ、です」
「ホントにどっこも辛くねぇ?」
コクリと頷いた新八の手が手首に絡む。
手の平に繋ぎなおしてぎゅっと握った。
「じゃあ……いいか?」
「は、い」
手を離して身体を起こす。
「お前の身体、まだちゃんとしてやってねぇから、辛いばっかかもしんねぇけど……」
新八ン中はホント、洒落になんねぇくらい気持ちよくて。
快楽を追い始めたら気遣ってやれるかどうか正直自信がない。
「先生にしてもらえて、すごく嬉しいから……そんな風に思わないでください。それに……」
「ん?」
「これが最後じゃ、ないんですよね?」
「何不穏な事言ってんの。当たり前だろーが」
「だったら……」
「そうだな。もっと時間かけて、めちゃめちゃ感じる身体にしてやっから安心しろな」
「あの、そういうのは別に……」
新八はいつも無自覚に核心を突いてくる。
それに付随する諸々を考えないから墓穴を掘りまくる。
これ幸いと付け込むのは俺だけど。
「だったら、無防備な発言は自覚するよーに」
「先生にしか、言わないです……」
無防備なのに、いつも俺より一枚上手。
どうしたって敵わない。
そんな新八だから、俺は愛しくて堪らない。
この先新八が変わるなら、きっとそれすらも愛しいんだろう。
どんなに変わっても、きっと新八が新八である事は揺るがない。
膝裏を腕にかけて新八の上に覆い被さる。
キスをして、絡んだ舌を強く吸ったら新八の声が喉から零れた。
表情に苦痛がないのを確かめながらゆっくりと出し入れを繰り返す。
こればっかが目的じゃねぇけど。
でもずっと抱きたかった身体を今俺は抱いてる。
なのに。
熱くて、狭くて、柔らかい、新八の中は優しくて。
包み込まれる感覚はまるで、抱いてるのに抱かれてるみたいだ。
嬉しくて、泣きたくなるなんて俺には関係ねぇ感情だと思ってたけど。
こんなにも愛しいと思う相手には。
一生に一度しか会えないんだと思った。


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