ども、坂田銀時です。
冗談じゃなくて高校教師やってます。
もっそい可愛い恋人がいんだけど、ちょっと色々訳ありで。
法の目を掻い潜る所存でゴザイマスって感じデス。
名前しかわかんねーよっとかいうツッコミは無しの方向で。
気になんなら銀魂読みなさいね、課題図書だから。
じゃ、まぁそんな感じでどうぞ。






俺は私服ってやつが苦手だ。
どうも面倒で邪魔臭い。
クラスの女子どもが同じ服を二日続けて着ただけで不潔だなんだとギャーギャーうるさいからだ。
お前らだって毎日同じ制服着てるくせによ。
大体、一日二日着替えなかったくらいで人間死にゃしねーっての。
仕方がないから誤魔化すために科学でも保健医でもないのに年中白衣を引っ掛けてたらいつのまにやら定着してました、ってな顛末で。
今じゃ俺のトレードマークだ。
しかし白衣だったら毎日同じでもかまわねーってとこがよくわかんらんね。





昼休み、飯でも食うかと購買で買った袋をぶら下げて廊下を歩いていたら誰かが後ろで笑う気配がした。
振り向いたら眼鏡がいた。
俺の好きな柔らかい笑顔。
新八だ。
「声かけよーよ、志村君」
この子は黙って後ろを歩いてたんかね、全く水臭い。
片手に昼飯、空いてる方はポケットに突っ込んで俺は軽く片眉を上げた。
「違いますよ」
新八の指が白衣のポケットを指して。
「かけようと思ったらそれが」
そう言ってまたくすり。
指摘に目線を下げてみれば手を突っ込んだポケットから細い棒がぴょんと飛び出していた。
なんだこりゃ。
この上なく甘味を愛している俺は白衣のポケットに飴を常備していた。
丸い塊に細い軸のついたやつを味違いで数種類。
新八の指摘にポケットを見れば,ほつれた縫い目の間からその飴の軸が顔を出していたのだ。
新八はそれが可笑しかったらしい。
突っ込んでる手で適当な球体を摘んでみたらあわせたように棒が動いた。
「あらま」
「落とす前に気付いてよかったですね」
「ほんとだよ」
舐めてもいないのに数が減ったら泣くに泣けないからな。
未然に防げてホントによかった。
良かった、良かったと飴で膨らんだポケットをぽんぽん叩いていたらまた新八に笑われた。
「今頃からお昼ですか?」
今頃、なんて聞くって事は新八は既に食事を終えてるんだろう。
昼休みは既に半分終わってるから当然か。
俺たちはたまに約束をして一緒に昼飯を食ったりする(内緒でな)。
でも今日も明日も明後日も、ってな風に簡単にはいかないわけよ。
「そ、今頃からお昼です。こう見えても結構忙しい身なのよ?」
ちょっと持ち上げて見せた袋から覗くのは俺の昼飯、コロッケパン(×2)。
もそっとした安っぽい味がなんともいえず、時々無性に食いたくなる不思議パンだ。飲み物はコーヒー牛乳。
本当は苺牛乳がいいんだけども、なんかマイナーらしくて(あんなに美味いのに)現在購買のおばちゃんに入荷を交渉中だ。
「もう飯食っちゃった?」
特に急ぐ様子もなく新八は俺の隣を歩いている。
「はい、姉に用事があったんで先に」
残念。
「用事って?」
「買い物リクエスト、聞いてきたとこです」
なるほどね、だからこの廊下を歩いてるわけだ。
「買い物当番?」
「はい。一応交代制なので」
新八の家には親がない。姉と姉弟二人暮しだ。
家事は分担してやってるって話だけど、多分新八が8割じゃないかと俺は踏んでる(本人も「一応」交代制っていっちゃってるし)。
いつだったか、真っ黒い物体を志村姉に渡されたことがあるんだけども。
調理実習でクッキーを焼いたからって聞いたけど、あれはどう見ても口に入れていい代物じゃなかったよ?
多分感の良い奴なら口に入れたりはしなかっただろう。
案の定、命知らずの男子が数名保健室に運ばれて大騒ぎになった。
俺は、どこからうわさを聞きつけたのか知らないがしきりに欲しがる近藤先生に渡りに船、とばかりに進呈したから事なきを得た。
近藤先生はその後二日間無断欠勤だったけども(……合掌)。
「今日は何作んの?」
「決めてないですけど……見切り品次第かなぁ」
何が食べたいか、じゃなくて何が食べられるか、か。
仕方ないこととはいえ慎ましいよな。
新八の料理は弁当で何度か食べたことがある。
凝ったものは作らないけどなかなかの腕前だし、何より味付けが俺好み。
考えてたら空腹度が増した。
「一回先生ン家で作ってほしーね」
周りに人の気配がないのを確認し、少し小声。
「……機会があったら」
返事をする新八の耳は少し赤い。
教師と生徒、そして恋人。
それは誰も知らなくていい、俺たちだけのささやかな隠し事だった。





廊下の先の階段を上り、屋上に続く扉の前に立つとなんだか嫌な音がした。
重い鉄扉を開いてみれば予感は的中。
聞こえていたのは雨粒が地面と扉をたたく音。
外は見事に雨だった。
「何で降ってんの……イリュージョン?」
確かに朝から曇ってはいたが、予報では降るのは夕方からだったはずだ。
実際廊下の窓から見た時点ではまだ降ってなかった。
「しょーがねーな」
せっかく青空の下で新八と、って思ったのに……ま、偶然会えただけでもラッキーだと思うか。
仕方がないから階段に並んで座った。
階段は踊り場で向きが変わるから下からは丁度死角になる。
屋上は立ち入り禁止、を皆意外にも律儀に守ってるらしく俺はいつも貸し切り状態で使用できる。
ここの生徒は結構善良らしい(馬鹿正直ってのも美徳だよな)。
教室から遠いこの場所は俺たち以外に人の気配はなく、ただ鈍い雨音が響くばかりだった。


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