「んーんっ」
「何?」
「んんんっ」
「ちゃんと言葉にしてくんないとわかんねーよ?」
触れた唇で擽るように囁けば、新八の頬が綺麗に染まる。
言葉を紡げば唇が開く。
それをしたくない新八の、弱みに俺は付け込んで。
唇の中を探りたい、その気持ちを伝えるようにそっとなぞった。
しない、させない、やらせないってな。
前に新八とベロチュー禁止の約束なんかしたんだけども。
はちみつ漬けの志村君が腕の中にいたら、どんな聖人君子でも落ちるってもんじゃありませんか?
ましてや俺なんて、理性を入れて持ち歩いてる白衣のポッケに穴が開いてるような人間ですから。
繕ってくれるのは新八で。
でもその新八は現在俺が拘束中。
だったら結果は推して知るべし。
舌と指先で探る肌、新八の緊張が僅かに緩む。
「しんぱち」
唇の合わせ目を舌先でつつく。
急ぎも焦りも、しない。
新八の気持ちを待つことは、俺にとって何の苦痛も伴わないからだ。
慣れないながらも少しずつ、俺に心を預けてくれる。
それでもきちんと両足を地につけて、ちゃんと自分で立ってる強さ。
そういうのが愛しくてたまんなくて。
大事にしたい自分と全部奪いたい自分が、いつだって心の中で鬩ぎ合う。
「ふ……ぅ……」
体勢と、状況と。
苦しさから逃れるように新八の口元から息が洩れる。
その響きはまるで切ないため息みたいで。
少し開いた唇に舌で触れれば新八と目が合う。
硝子越しに潤んだ黒が拗ねたように俺を睨んで……諦めたようにゆっくりと瞼に隠れた。
入り口に留まる俺の舌に新八のそれが触れる。
誘うわけじゃない、確かめるような控えめな接触に俺の中の何かが疼く。
ゆっくりと侵入すれば、そこは柔らかく暖かい。
積極的にはなれない新八の舌が逃げるように奥へと引っ込む。
追いかけて捉えれば観念したように力を抜いた。
舌が触れ合うほどの深いキスはまだ数えるほどしかした事はねぇけども。
少しずつ慣れていく新八の、慣れない仕草に俺はどんどんはまり込むばかりで。
不意にその肌に触れたくなる。
舌の弾力を確かめるようにそっと吸い上げて、手のひらをそっと忍ばせた。
ガードの緩い体操着は容易く俺の侵入を許す。
腹からゆっくり撫で上げて、手のひらの感触にピクリと揺れた新八の肌を慰める。
触り心地と体温と。
その気持ち良さをなんて表現したらいいんだか。
今すぐこいつ抱き締めて眠りたくなる。
汗の名残を少し残したしっとりとした感触を楽しみながら、臍のくぼみやらわき腹やらに寄り道しつつ辿りつくそこ。
指先に触れた突起は新八を跳ねさせるスイッチで。
やんわりと捏ねてやればやがて存在を主張する。
くりりと立ち上がったそれをきゅきゅっと揺らせば新八も揺れて。
「ふ、ゃ……ん」
喉の奥でくぐもる声は俺の口中に吸い込まれ、そこから溢れた堪えきれない快感が切ない音で鼻を通った。
それは掠めるように俺の背中を撫でていく。
めちゃやベぇ。
こりゃ10年若かったら間違いなく理性ぶっ千切ってたね。
……けど、いい加減引き時だ。
名残惜しいけど、なんて思いつつ新八を解放(唇だけな。だってまだ触っててーもん)したら
グェッ……って、ん?
目の前に綺麗な青空が見えた。
何かが俺の顎を押し上げて、微かに視界を掠める指先でそのなにかが手だとわかる。
誰でもない、新八の手だ。
「ひんはひふん?」
がしっと掴まれた不自由な顎で俺は新八の名を呼ぶ。
「なんてこと……すんですか」
応えた新八の、それからの行動は早かった。
俺の顎を押しのけて。
服に突っ込んでた腕を引っこ抜いて。
がばちょ、と自分の膝を抱え込んだ。
そうして俺の足の間で団子虫みたいに見事に丸まっちまった。
「新八?」
無理を承知で俺は横から気持ち精一杯に顔を覗き込む。
「せんせーの、ばか……せんせーの、ばか……せんせーの、ばか……」
膝を抱え込んだまま馬鹿を連呼する新八。
まぁ馬鹿を否定はしねぇけど。
でもそれは俺を非難するというよりはまるで何かの呪文みたいに繰り返される。
気持ちを静めるようなっつーか、気を紛らわすようなっつーか……って、あ?
いや待て俺、落ち着け俺、冷静を保て俺。
ふと頭を過ぎった可能性に取りあえず自分ツッコミ三連発。
一度大きく深呼吸。
だって、ですよ?
まさかって思うじゃんよ。
新八君だぜ?
新八君がそんな……いやいやいや。
あ?何言ってっかわかんねーって?
俺もわかんねー……ってのは嘘だけど。
「新八」
足の間で未だにきゅっとなってる新八の、俯いた後頭部をくしゃりと混ぜる。
「……ホント、先生馬鹿だからよ」
よっこらよっこら、些かの苦労を伴って新八の身体を半回転。
向かい合わせても顔は上がらない。
「しーんぱち」
両手を差し込んで、小さな頭を抱えるように手のひらで包む。
そっと上げれば素直に顔を見せてくれた。
ガラスの向こう、黒い瞳は涙で潤んでほっぺはほんのり可愛いピンクで。
これって16才男子にあるまじき。
怒ってんのかもしんねーけど。
そういう感じでプンスカされても先生全く反省できませんよ?
ちょっとだけ眉間に寄った皺を親指で軽く押さえて。
「いっぺん殴っとく?」
「や……です」
「殴りゃいーのに……怒ってんだろ?」
「怒って、ないです」
「けどよ」
「先生が、悪いばっかじゃ……ないから」
膝を抱えた新八の、指先がきゅっと白くなる。
「逃げないくせに、そうなったら先生の所為にして……僕、ずるいですよね」
ごめんなさいと小さく呟いて俯いた。
もう一度顔を上げさせて眼鏡を外してやる。
舌で丁寧に唇を舐めると自然と迎え入れられた。
緩やかな絡みはまるで熱に溶けていくチョコレートみたいに甘い。
音がするように軽く二回啄ばんで一度離れる。
「もう絶対に学校ではこんなことしねーから」
脱いだ白衣を敷布にしてゆっくりと新八の身体を倒す。
「一回だけ、口でさせて?」
控えめにジャージの布を持ち上げる盛り上がりは調子に乗った俺の所為。
馬鹿みたいに新八の事が好きで好きで堪んなくて、俺は新八に触ってるだけでもかなり満足できたりするわけ。
でもって新八自身の欲望とは無縁な雰囲気についつい油断しちまった……ていうより甘え過ぎた。
反省は勿論してるけど、それはそれ。
新八が俺に感じてくれるってすげー嬉しい。
それを実感するのは昇天寸前の快感だったりするんだぜ?
「ででで、でもっ」
「新八君、どもり過ぎ」
緊張を和らげる為に顔中にキスをする。
「僕、汗かいたしっ……」
「気にしねー」
「っあ……」
手始めに、憎き高屋の体操着を捲り上げる。
白い肌に綺麗に映える薄桃色。
まだ数度しかお目にかかったことのない可愛いそれに唇を寄せた。
さっきの名残でツンとした突起をそっと食む。
舌で撫でれば微かな塩味がした。
塩味だけど甘いって、なんかすげー。
人間思い込んだら小麦粉でも病気が治るって聞くけど、これは絶対思い込みなんかじゃねーよ。
新八は確実に甘い。
ずっと舐めてても多分飽きない。
「ん……」
俺を挟んだ新八の足がもぞりと動く。
手のひらで両の脇腹を撫でるように辿ってズボンのゴムに触れると少しだけ不安そうな黒い瞳が俺を見た。
心配すんなと視線を外さず指を滑らせる。
「全部、綺麗に、飲んでやるから」
瞬間、新八の肌が綺麗に染まった。
「……あっ、あ……っ」
黒の瞳が涙で濡れて、外気に触れた欲望が震えるように形を変える。
新八、俺の言葉だけで感じてくれんの?
愛しくて。
淡い下生えをそっと擽り根元に触れる。
先端から零れ落ちそうなものを舐め取る為に舌を伸ばし、そのまま口に含んだ。
そうする事に躊躇いは何もない。
新八のものだって思う愛しい気持ちがあるだけで。
ただ、愛したかった。
「せ、んせ……」
「ん?」
荒い息の隙間から手を伸ばす、新八の震える指先をそっと包む。
細い指にキュッと力が篭った。
「……あとで、ぎゅって……して、ください」
俺のエゴみたいな欲望にこんな風に乱されて、それでもお前はそんなに綺麗に笑ってくれんだな。
「勿論。いっぱい、してやるよ」
お前が望むなら何だって、いくらだって。
「うん……」
約束を握り返せば指先は安心したようにすっと離れて俺の髪に潜り込む。
探るようなぎこちない動きも俺には何よりも甘い愛撫。
内モモを少し強く吸い上げて、付いた所有の印に満たされる独占欲。
「先生いた、い……」
「わり」
もう一度、慰めるようにそこに口付けて。
「これからいっぱい気持ちよくしてやっから」
宣言すれば視線は羞恥に揺れた。
僅かに尻込む身体を押さえて俺は再び新八に触れる。
口の中で震える熱と耳を打つ甘い声。
吹き抜ける風が肌を優しく煽る感触も相俟って。
まるで鮮やかな白昼夢の中にいるようだった。


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