「それってどういう?」
横になって、合わせた視線で聞いてくる。
無邪気とは、違う……なんていうんだろな、これ。
「んー、つまりそっち系の話だけど……例えば大人の玩具、とか知ってっか?」
「……少しくらいなら」
そっか、知ってんのか。
答えにちょっと驚いたけど、考えてみりゃ無菌室で純粋培養されてるわけじゃないもんな。
きっと新八は俺が思ってるよりもずっと普通の16歳の高校生男子なんだと思う。
夢見すぎてる自覚はあるし。
けど“知ってる”ってとこはすげー追求したいんですけども。
「因みに、どういう知識?」
温かい頬にそっと触れる。
「ど、ういうって……あの」
視線を泳がせた新八の手が頬に当てた俺の小指をきゅっと握った。
「代わりに……い、いれたりするって……」
「それって、誰かに教えてもらったり?」
伏せた瞼が羞恥に震えた。
「雑誌の、通販ページに載ってて……友達が騒いで見せてくれて……」
見せてくれてって……そりゃ軽くセクハラなんじゃねぇの?
新八のいるとこでその手のモンが載ってる雑誌とか見てんじゃねっつの。
友達って新八は濁してるけど、十中八九高屋なんじゃねぇかと俺は踏んでる。
濡れ衣だとしても関係ない。
あいつには体操服の怨みもあるし。
逆恨み上等。
いつか絞める!(つっても顔知らねーけど)
新八の、睫毛の先がそっと震えてゆっくりと瞼が開いていく。
「先生は、そういうの……したいんですか?」
モノの例えで聞いてみただけで、別にそういう嗜好があるわけじゃないけども。
問われて、少し考えた。
「……どうだろ」
頬にかかる黒髪を指先でそっとかき上げる。
「僕、きっと普通より何にも知らないです、けど……先生が教えてくれるなら、頑張って覚えます」
馬鹿みたいに、俺だけを信じてるわけじゃない。
でも眼差しが、俺だけを信じてると伝えてくれる。
「こっち」
くっ付いて。
形の気持ち良い小さい頭を抱え込んで一息落ち着く。
新八の中には澱がなくて。
不純物のない水はどんなに掻き混ぜたって濁る事はないんだって。
なんか、すげえ……思い知らされる。
この存在を、俺が好きにしていいなんてな。
新八相手だとあればあるだけ際限なく、なんてまるでガキみたいに自制が利かない。
新八がくれ続けるから歯止めがきかない。
「無理してねぇ?」
「してないです」
「ホントに?」
「……怖いけど、先生にされるなら自然に受け入れちゃうんだろうなっていうか」
………………すいません、自制心って何処で売ってますか。
手持ちがもう一つもないんですけど。
「やっぱ無いわ」
「はい?」
「道具とかそういうのは無し、絶対無し」
「無しですか?」
「うん、無し」
新八の中に俺以外、とか有りえねぇ。
こいつには俺だけ。
俺だけのモン。
「一応誤解がないように言っとくけど、そういうもん持ってるわけじゃないからな?」
「そうなんですか?」
「……そんな意外そうな反応されるとショックなんだけど」
「そっか、ごめんなさい」
自業自得な部分が無きにしも非ずなわけだし、まあいいけどな。
あぁ畜生、可愛くて堪んね。
「あの、先生……」
暫くじっとしてた新八がもそもそと動きだした。
「んー?」
「お風呂、入ってきていいですか?」
胸元で新八が、俺の答えをじっと待つ。
「…………」
俺は時々お前の素直さが怖いよ。
汚せなくて怖がらなくてって、最強じゃん。
一体何したらお前は俺を怖がるんだろな。
脇の下に手を入れて、新八の身体をズルズルと引き上げる。
顔の位置が揃うまで。
「俺も一緒に入る」
「え?」
コタツの中で温められた体温は額に当てた唇を溶かしそうに熱い。
「だってもう色々我慢できねぇもん。脱がせたいし、洗いたいし、新八の事風呂ン中でヌルヌルにしたくてしょうがなくなった」
「ぬるぬる……」
「うん」
額と鼻を付き合わせれば間近に深い黒。
「泡とかあれとかそれとか、でね」
片膝を割り入れて、教えるように内ももに触れる。
手の平で裏側から撫で上げて尻を通って腰まで。
「せんせ……」
吐息が唇にあたった。
裾から入れた手の平を、新八の肌が吸い付ける。
そこは炬燵の所為か俺の所為か、ほんの僅か汗ばんで。
「風呂から出んの待てねぇから、一緒に入らせて」
薄い背中を真っ直ぐ辿って皮膚の下の骨を撫でる。
「ん……」
感じた新八が背中を反らすと無防備な首筋が開いた。
鼻先を埋めると仄かに新八が香る。
吸い付いた肌は舌に甘くて、思わず歯を立てたくなる。
押し返すような弾力に我慢できなくて、少し甘噛み。
「新八」
「は、い?」
こくり、と歯の下で喉が動くのを感じる。
「俺の事、怖くなったりしねぇ?」
肌を舐めて顔を上げる。
「どうしてですか?」
床に阻まれても首を傾げたのだとわかるのはきょとんとした不思議顔の所為。
「なんか色々歯止め、効かねぇし……変な事聞くし、触りまくりだし」
今だって捲くれ上がってる服の裾から忍び込ませた手を抜く気もないし。
節度ある大人ってどうやったらなれんの?
ああもうホント、情けねぇ。
新八の肩に額を寄せて目を閉じる。
何度も何度も確認して。
その度に新八がそれを否定をしてくれても、きっと俺の不安はなくならない。
「先生は」
衣擦れの音がして、鼻先に蜜柑の匂い。
「いつも、僕に合わせて待ってくれますよね」
すぐに頬に感触があって、目を開けると新八の指が触れたのだとわかった。
「僕じゃ子供過ぎて、先生に釣り合わないんじゃないかっていつも不安だから……触ってもらえると安心、するんです」
すり寄せられる鼻先が、はにかみながら顎を掠める。
「僕で、いいんだって」
唇を寄せる大胆さはないけど、新八らしい甘え方。
温もりは、そうとは意識しないままにいつも俺を繋ぎとめる。
「新八」
「はい」
「お前じゃないと意味、ねぇから」
「……はい」
俺達の間にある、互いにしか取り除けないそれぞれの不安。
隠さずに、誤魔化さずに、歩み寄っていけたらいいって思う。
一人じゃ越えられない山も、二人ならきっと何とかなる……なんて陳腐だけどさ。
新八が目の前で笑ってくれるだけですげえ力になるつーか、ね。
辛うじて胸元までを隠してる残りの服をゆっくりとたくし上げると脇で止まって溜まった布から可愛い色がちらりと覗く。
舐めたいけど、んな事したら最後、ブレーキかける自信がない。
とはいえ目の前の誘惑には勝てなくて、とりあえず親指で撫でてみた。
「んっ」
刺激に揺れる新八の身体。
ひくりとするそれに、弛んだ俺の頭のネジは簡単に吹っ飛びそうになる。
……やっぱ無理だろ、これ。
だってもうストックないって言ったじゃん。
「風呂、これから沸かすんだよな……」
「そうですよ」
「沸くまで待つとかちょっと無理っぽい、んだけど」
「え……あっ」
控えめな突起を口に含めば、走るような鼓動が舌に響いた。
ちゅく、と少し強めに吸いあげれば新八の指が縋るように俺の髪に差し込まれる。
「せ、んせ……」
眉を下げて、困ったように俺を見るのに指先は優しく髪を掴む。
「僕、少し汗かいちゃったんですけど……」
「いい、汗ごと舐めたい」
薄い皮膚に舌をのせて胸の間をゆっくり舐める。
「で、でも……」
「新八味がいい」
見詰めれば一瞬で頬が染まる。
「えっと……でも、最後までするのはお風呂の後に、してくだ、さい」
赤い顔。
押し返さない腕の力。
精一杯の譲歩。
全部が俺を甘やかす。
「了解」
許された肌に傅くと腕が優しく首に回された。
「心臓、すげーバクバクいってんな」
「当たり前じゃ、ないですか」
「緊張する?」
「少し」
俺の誕生日に初めてしてから、ぶっちゃけ今日が三回目。
そりゃ無理もない話。
でも仮に俺達がやりまくってたとしても……多分、新八は変わんない気がすんだよな。
それはなんかもう確信に近いんだけど。
「新八、ぎゅってしがみ付いて」
「え?こう、ですか?」
「ん、ちゃんと掴まってろな」
「わわっ」
新八を引きずったまま俺は匍匐前進の要領でズルズルと炬燵から這い出した。
台の下に下半身突っ込んだままじゃ色々と障りがあるしな。
「堪え性なくて、ごめんな」
擦り上げた摩擦で元に戻った服をまた捲り上げて肌に触れる。
「そんなこと、ないです」
新八は首からはずした手を俺の頭にそっと添えた。
髪の間、指先が優しく地肌を滑る。
その動きに誘われるまま触れた唇は自然に柔らかく開く。
片肘で自重を支えて舌を探る傍らで、俺は新八のジーンズを寛げた。
平たい腹を慰めるように数回撫でて、ゆっくりと布地に手の平を差し込んでいく。
「ん」
身体がぴくりと反射で跳ねて、黒い瞳が現れる。
唇を離して視線を合わせると新八の手が髪から離れて肩へと落ちた。
そのままゆっくり辿るように降りて、逆手にかえて俺の支えの腕をぎゅっと掴む。
もう片方は顔の横にとさりと置かれた。
「平気か?」
確かめるように少しずつ。
乾いた茂みを通り過ぎると指先に熱が触れる。
「先生に触られるの好き、です」
二本の指を挟むように滑らせて、先まで撫でると新八がぴくぴくと震える。
「ド、キドキするの、と安心、するのが、混ざって……不思議な、感じ……」
少しずつ息を吐きながら、堪えるように綴られる言葉。
微かに寄った眉間の皺が可愛くて、俺はそこに唇をつけた。
緩やかな立ち上がりと濡れた先端。
俺の手に反応してくれる身体がただ愛しい。
「ふ……」
ゆっくりと動かす俺の手に、感じて開いた唇が吐息を洩らす。
「せ、んせ……」
「うん?」
「き、もちい、い……」
「いい?」
「ん……」
溶ける様な新八の表情。
「あっ」
煽られて、思わず力の入った指先に身体が小さく跳ねた。
「でも待って、先生……待って」
太ももを閉じて堪えるように眉を寄せる。
「なんで?」
強くはしないけど止めもしない。
緩やかに快感を促したまま問いかけると腕を掴む新八の指先に力が篭った。
「先生と一緒が、いい……です」
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