エイプリルフール
志村新八が一ダース。
箱に小粒で入っていて、毎日一粒ずつ舐めたい。
新八は、やっぱ摂取するものだと思うのです。
だってほんとに新八が足りない。
ジャンプで見たい。
眼鏡だけでもいいから毎週隅っこに描いておいて欲しい。
新ちゃん、頼むからぎゅーってさせて。
坂田の気持ちがわかるよね。
***
坂田が新八不足でへたってたら
「あんたはほんとに馬鹿ですね」
って、呆れたみたいに笑いながら膝枕をしてくれる。
髪を撫でるとか、あやすみたいに身体をぽんぽん叩くとか。
新八の掌は無意識に坂田を優しく癒すのです。
回復した坂田はちょっと元気になって膝枕から手を伸ばす。
その手が届く前に。
「キスは、駄目ですよ」
咎める声は、あやすように甘い。
「……何で?」
「僕、今日帰りますもん」
「聞いてねぇんだけど」
「言ってないですから」
「……あーあ……」
「どうかしました?」
「熟年離婚はある日突然妻から切り出されるんだと」
あまりに身に覚えがありすぎて。
新八に伸ばした手を引き戻し、銀時は目を覆う。
その甲に新八の掌が重なった。
「あんたみたいな馬鹿は見たことないです」
笑いを含んだ唇がそっと触れる。
銀時より、少しだけ高い温度。
柔らかく触れた後、呟く吐息がかかった。
「四月馬鹿」
その言葉に掌をずらして。
「……どこのお茶目さんですか、コノヤロー」
捉えた新八の視線。
成功した悪戯に、きらきらと輝く黒は年相応の幼さで。
「じゃあ今日は銀さんが送ったらぁ」
「うわっ」
膝枕の体勢から、どうしてこんな事に?という早業で、銀時は新八を自分の下に抱きこんだ。
畳の上で形勢逆転。
顎に軽く歯を立てると新八の喉が息を呑む。
「お、送ってくれるんじゃ……」
「んー、ちゃんと送ってやるよ?」
「なら……」
「新八さぁ。天国、いきたくね?」
「てっ……」
言葉の意味がわかりすぎて新八は真っ赤になる。
「い、いいですっ。行きたくないですっ」
「あ、そう?今日はイカせてやんなくていいの?」
にやりと笑う銀時の、言葉のニュアンスが、何か違う。
「遠慮しますっ」
「え〜」
真っ赤な顔で顎を押し返してくる新八の腕を捉えて両脇に縫いとめた。
「折角の天国ツアーなのに。サービスするぞ?」
「いらないですっ」
「そうか?んじゃ仕方ねーな」
銀時の言葉に新八がホッと息をつく。
可愛いけれど。
「お客様、キャンセル料いただきますよ」
「は?」
もう少しだけ困った顔を楽しみたくて。
「何ですか、それ」
「いや、新八天国ツアー断ったから」
「予約とかしてないですから」
「いやいや。気を利かせて銀さんがとっといてやったんだろが」
「頼んでません」
やり取りは至ってくだらない。
それでも新八は律儀に相槌を返すのだ。
「……だってよー、新八にからかわれて銀さんすげー傷ついちゃったんだぜ?」
強気だった新八の目が少し怯む。
銀時の我侭に、絆されていくのがわかる。
そこに付け込む自分のずるさも甘えも承知しているけれど。
「ど、どうすればいいんですか……」
ああ可愛い。
可愛くてたまらない。
こんな理不尽なやり取りに、こんなにも真剣に困惑して。
エイプリルフールについた嘘に後ろめたさを感じている新八に、愛しい気持ちが止まらない。
そっと囁くように告げる。
「一人でイクとこ、見せてくれよ」
言葉の意味が新八に浸透して、黒い瞳が羞恥に潤んでいく。
それは見惚れるほどに綺麗で。
眼鏡を外して額に口付ける。
冗談だと呟いて、銀時は小さく震える身体を優しく抱き締めた。
☆