090812
昼近くに起き出した銀時は水を飲む為に台所へ向かう。
途中、リビングのソファに見慣れた後頭部を見つけて足を止めた。
「あれ、お前今日休みじゃなかったっけ」
甚平の裾から手を入れて腹をかく。
「あ、おはようございます」
覗き込むように背後から覆い被されば、応えるように顔が仰向いた。
新八のこんな横着は珍しい。
めったにない仕草が可愛くてそのまま唇をそっと下ろした。
触れるだけですぐに離れたけれど、新八の頬はほんのり染まっていた。
弛む頬を誤魔化したくてぺたりと下にある額を叩く。
「何で叩くんですか」
叩かれた額を両手で押さえ、さも理不尽だというように銀時を振り返る新八は可愛いばかり。
黒髪をクシャリと手櫛で乱し、銀時は隣に回りこんで腰を据えた。
「なんで休みなのに来たの?」
無視ですか、というツッコミを頬にするキスでかわす。
ニヤリと笑った顔をみて無駄を悟った新八がため息混じりに呟いた。
「休みだからですよ」
「すること無くネ?」
「別にいいじゃないですか」
「ふーん」
濁すけれど。
そうだったらいいのに、という希望的観測は銀時の中にある。
「ちょ、何してんですか」
身体を倒して新八の膝に頭を載せると焦った声が降ってきた。
「することないなら銀さんの枕やってちょーだい」
「あんたまだ寝る気ですか?」
「休みだからね」
二度寝する気は全くなかったが、新八が傍にいて枕をしてくれるというのならこのまま怠惰に過ごすのも悪くはない。
いつもと何も変わらないといわれれば返す言葉もないけれど。
「新ちゃんが何しに来たか言わねぇから銀さんも好きにする」
胸の上に置かせた手を、顔を見ながらゆっくりと弄れば黒い瞳がうろたえた。
「何で今日来たの?」
袖から忍んで腕を撫でると観念したように唇がきゅっと引き結ばれた。
「銀さんが、居るからですよ」
悔しさを隠さない、少し拗ねた口元とか。
恥ずかしそうなのに逸らさない視線とか。
可愛くてたまらないと心底思う。
「じゃあ今日はずっと一緒にいっか?」
それこそいつもと変わらぬ日常だけれど。
言葉を聞いた新八の表情が嬉しそうに綻んだ。
玄関が勢いよく開いて。
「あー、銀ちゃんずるいアル!」
「うっせーな、今日は銀さん新八の誕生日プレゼントだからこれでいいんだよ」
「な、なななんでわか、わかったんですかっ……」
「わからいでか。銀さんを舐めんなよ?」
「私もプレゼント狩ってきたアル!」
「神楽……なんか字が違くね?」
「違わないアルよ、屁怒絽ン家の家庭菜園で野菜狩りさせてくれたアル。新八、今日はこれでサラダ作ってほしいアル!」
「お前が食いたいだけだろがっ」
☆
後になって読み返してみると新八の誕生日に昼まで寝てんじゃねーとかツッコミどころに気付いたりするんですが、この時は多分「自分にご褒美的な感じで休みなのに坂田さんに会いたくて来ちゃう新八」が書きたかったのでよいのです。
きっと姉弟水入らずで過ごさせてあげるつもりでいたんです。
でも一日顔も見られないのは我慢できないから後で神楽と奇襲をかける予定を立てていた坂田さんなのだと思います。
2015 6月補足 もんぺ