ラプンツェル
君を、高い高い塔に閉じ込めよう。
四角く切り取った小さな窓から青い空しか見えないような、高い塔に閉じ込めて。
吐く息すら、青く染まってしまうまで。
切り取られた四角い窓。
「帰りてーか……姉ちゃんとこ」
青い空を映した黒い瞳に銀時はそっと尋ねた。
頬に触れた指先を、新八の温かい手が慰めるように包み込んで。
新八の視線が移動する。
自分の顔が、濡れたような黒の中に映りこむのを夢見るようにただ見つめて。
「帰りたい、ですけど……でも、あんたを一人にもしたくないです」
指先から離れた新八の手が、上にある銀時の頬に添えられる。
成長しきらない、まだ子供の手の平だ。
それでもその熱は銀時の全身を包み込んで余りあるほどに大きい。
我慢できなくて。
我慢など、したくなくて。
銀時は目の前にある小さな身体を両腕で包み込んだ。
「何でお前なんか攫ってきちまったんだろーな」
殆ど陽の射さないこの部屋で、不思議と消えない太陽の匂い。
それを纏う新八の身体で呼吸して。
「今更後悔してんですか?」
笑う新八の、甘い吐息が首筋を擽った。
「……すげーしてる」
「せっかく会えたのに?」
さらりとした黒髪が頬を掠めて新八の身体がつっと離れる。
見上げてくる瞳は銀時にとってたった一つ、光を湛える明るい……。
「会えたから、してんだよ。もう離せねーもん」
触れた唇はとても甘く、遠い彼方に置いて来た微かな記憶を呼び覚ます。
「離さなきゃいいじゃないですか」
「お前、帰りてーんだろ?」
「帰りたいですよ。でも」
回された腕が、精一杯に銀時の身体を抱き締めようとしてくれて。
「僕がここを出る時は、あんたも一緒です」
銀時よりも優に一回りは小さな身体。
そこにあるのは現状に臆さない強い心とそれを映す真っ直ぐな、光を湛えた黒い瞳。
灯火のような温もりを感じながら銀時は、この煌めきが自分にとっての希望なのだと強く感じていた。
もしかしたら、それは許されないことなのかもしれないけれど。
終