鼓動


ふと夜中に目が覚める。
起き上がり、そっと。
隣に眠る口元に、手を翳し。
上下する胸元に、耳を当て。
そこに呼吸があることに安心をする。
浴衣の合わせから覗く包帯が、白く清潔である事に安心をする。
こんな夜はもう何度目なのか、覚えてなどいないけれど。
何度繰り返しても慣れるはずもなく、いつも新八の眠りは浅い。
喉の渇きを覚えて枕元の水差しに手を伸ばす。
水差しの口がグラスに触れてカチリと渇いた音を立てた。
一口含んで喉を通せば身体の中に水分が染み渡るのがわかる。
残りのそれを一息に飲み干して再び布団に身体を戻した。
そっと寄り添いいつものように銀時の片腕を抱え込む。
指先を伸ばし、重ねた手の平が温かい事に安心をする。
目頭が熱くなって目尻から水が零れ落ちる。
顔を寄せれば、それは流れ落ちてしまう前に銀時の布地が吸い取ってくれた。


自分がどんなに強くなっても。
銀時が銀時である限り、きっとこんな夜はなくなりはしない。
泣いて泣いて泣き尽くして、身体の中がカラカラに乾いても。
新八は毎晩水を用意する。
また銀時の為に泣けるように。
泣く事が弱さだとは思わない。
静かな夜の中で繰り返す。
明日笑うための、これは儀式なのだ。


慰めも謝罪も、銀時からの言葉は何一つないけれど。
「銀さん……」
絡めた指先を握り返してくれる強さだけで十分だと思う。
この温もりが傍らに、明日もあればいいと。
それだけを願って新八はゆっくりと瞼を閉じた。