咳
夜の中に新八の、咳をする小さな音が響く。
それを背中越しに聞いた銀時は、くるりと身体を裏返した。
「眠れねぇか?」
引き寄せて抱え込めば新八は胸元でこんこんと咳を堪える。
「ごめ……なさい、うるさ、いですよね」
咳の合間の苦しげな声。
「あほか」
軽く笑って汗ばんだ額に口付けた。
離れて眠るという新八を、無理に隣に眠らせたのは銀時だ。
せめて背を向けてくれというのに渋々頷いたけれど、やはり守るのは無理だった。
「んなこと言ってる間にさっさと治せっつの」
いつもより高い体温が力なく腕の中にいるのは心許ない。
胸元を湿らせる熱い息。
代わってやれたらと思うけれど。
手の平で軽く覆えてしまう肩から、二の腕を降りてゆっくりと撫でる。
「早く良くなれ」
何もしてやれない代わりにせめてもと、願いを込めて髪に触れた。
「ふ……っ」
新八の身体が強張って、胸元の布地が強く引かれる。
銀時は、零れないように嗚咽を堪える身体の震えを慰めるように抱きしめた。
「熱あると、涙腺弛むよな」
聞かせるともなく呟いて、泣いてもいいのだと暗に告げる。
息を飲む気配がして、新八の身体が大きく震えた。
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夜と、銀時と。
新八が泣くのはどっちが優しいからだろう。
優しいというのは切ないなと思います。
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