091030






川原の脇に膝を抱えた新八の背中を見つける。
喧嘩にもならない喧嘩の後で。
小さな息を吐き玄関から出て行った新八の、居場所を見つけるのは簡単だ。
水面をみつめる静かな横顔。
視線はどこか上の空。
それを暫く土手の上から眺めていた銀時は、吹いた風に背中を押され近づく為の一歩を踏み出す。
緑の斜面をゆっくり歩いて新八の隣まであと一歩。
つま先が土を踏む音に新八がふっと意識を戻した。
傍らに立った銀時を振り仰ぐ。
「今日の晩御飯何にしようかなって、ずっと考えてました」
考えてたのは本当で、でもそれはきっと献立じゃなくて。
銀時が来た事に驚いた風もなく、嘘と本当を綺麗に混ぜて新八が口元で小さく笑う。
立ち上がり、袴を掃った新八は微笑んだまま銀時を見上げた。
「帰りましょうか」
当たり前のようにそう言われて。
探しに来たのは銀時なのに、まるで見つけてもらった迷子のように鼻の奥がツンと痛んだ。
行きましょうと袖を引かれ、ゆっくりと歩を進める。
少し前を歩く小さな身体はいつだって、怖いくらい柔らかに銀時の存在を受け止める。
些細な事で怒らせて。
許される事で安心をする、ずるい自分を自覚して。
「ハンバーグが食いてぇな」
「ハンバーグですか?うーん、確か使いかけのひき肉が残ってたから……あ、お豆腐屋さんに寄っていいですか?」
「肉屋じゃなくて?」
「お豆腐屋さんでおからをただで分けて貰えるんですよ。それで嵩増しするんです」
「いっぺんくれェ肉100%の塊が食いてぇなぁ」
「そう思うなら肉代稼いできて下さいよ」
「それを遣り繰りすんのが奥さんの仕事だろ?」
「だ、から僕奥さんとかじゃないですって何回言ったら……もう、ホントあんた我が侭ですね」
いつの間にか隣に並んだ新八が唇を小さく尖らせる。
その口元がすぐに弛むのを知っていて、銀時はこんなやりとりを幾度も繰り返す。
許される事に甘え続けて新八に沢山の我が侭を注ぎ込む。
いつか受け止めきれなくなったそれが心から溢れてどうしようもなくなって。
そうしたら新八は自分の元を逃げ出すだろうか。
そんな日が来るのを、多分心のどこかで願っている。
愛想を尽かせて背を向ける新八を、腕の中に閉じ込めて。
これ以上ないくらいの愛を注ぎ込んでみたい。
もう嫌だと、その瞳が怯えるまで。
もう嫌だと、その手が縋るまで。
心にも、身体にも。
隙間もないほどに浴びせてみたい。

飼い馴らした甘い誘惑がまた今日も少し育つのを、銀時は胸の中に感じていた。



別に病んでいるとかそういうことではなく。
少なからず、坂田はこういう感情を胸の奥に持っているといい。
3Z坂田にはないけれど、万事屋坂田には多分ある。
何故か確信的にそう思います。
新八がずぶずぶと恐ろしいくらいに坂田を甘やかすので坂田の望みが叶う日はこないんじゃないかなぁ(笑)
ぱちは魅惑の甘い底なし沼ですよー。