長湯
狭い浴槽に二人で浸かり、銀時は新八を閉じ込める。
湯に火照った薄桃の肌に情事の跡が色濃く浮かんだ。
黒髪が隠す首筋に、ちらりと見える紅に口付けて。
銀時は抱き込んだ新八の腹をゆっくりと撫でた。
「無理させて、悪かったな」
「あ……いえ……」
ぱしゃんとお湯を弾かせて、新八の手が膝を抱える。
「その……ぼ、僕もよ、よかったしっ……」
再びぽちょんと音がして、新八の口元は湯面に沈んだ。
「そっか」
染まった耳たぶに頬を寄せて、銀時は腕の輪を縮めた。
今日はどうにも止まらなくて、新八の身に埋めたまま三度快感を注ぎ込んだ。
細い身体は最後には息も絶え絶えで、それでも深く受け止めてくれた。
「明日、動けそうか?」
明朝はゴミ置き場の掃除当番だからと念を押されていたのに。
許される喜びに、歯止めがきかなくて。
「大丈夫ですよ」
お湯から顔を上げた新八は振り向いた唇で銀時に触れた。
許す温もり。
それは身体を包むお湯よりも銀時にとって心地よい温度で。
「やっぱ俺代わりに行くわ」
「え?」
「俺が掃除行くからさ、お前寝てろよ」
「でも……」
「たまには甘えろって、な?」
「いいんですか?」
「任せなさい」
「じゃあお願い、しようかな」
「ん」
はにかむように照れ笑う、その表情に満たされる。
手の平に湯をすくい、空気に乾いた滑らかな肩にそっとかける。
新八が気持ち良さそうに背を寄せた。
「朝、さ」
「はい」
「起こすのだけ、頼んでもいい?」
自分で言い出したとはいえ早朝の掃除当番。
自力で起きる自信は、ちょっとなかった。
情けない大人の可愛い甘えに新八は心得たように笑んだ。
「ちゃんとそのつもりでしたよ。簡単に食べられるようにおにぎりも作りますね」
労るつもりが労られ、結局銀時は新八に甘え過ぎてしまう。
「具は?」
「ご飯」
「は?」
「只の塩むすびってことです」
「……マジで?」
肩に懐いたら新八の顔が隣で笑った。
「この間の仕事代が入るのが明後日なんですよ。だからちょっと節約。心配しなくてもちゃんと朝ご飯はおかずありますから」
慰める声。
切り詰める原因の最大を担っている自覚があるから大人しく頷いた。
それに本当は具などなくても構わないのだ。
新八の作るものなら何でも美味いと感じるのだから。
炊き立ての白米に程よく塗された塩加減。
新八の握る、少し不恰好な三角形。
思い浮かべたら、減ってもいない腹が鳴りそうだった。
「新ちゃんが奥さんで良かった」
項に鼻先を押し付ける。
「……あんた馬鹿です」
見なくてもわかる、染まる頬。
「ホントにな」
愛しくて、愛しくて。
のぼせた新八がくたりとするまで、銀時はその腕を解いてやれなかった。
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