ハニー








膝を抱えてしゃがみ込んで、こっちを向いてちょっと笑う。
何してんの?って傍に寄ったら人差し指をそっと唇に当てて。
「蝶々」
潜めた声で教えてくれた。
道端に捨てられた、空き缶から零れたジュースに。
甘い香りに誘われたのか、一匹の紋白蝶。
「美味しいんですかね」
新八は見守るような眼差しで蝶々の食事を待っている。
多分拾おうとして、邪魔をするのを躊躇って。
「まあ、そこそこは美味いんじゃねぇの?」
肩を並べて隣にしゃがむ。
「最近はアスファルトが多いから花が少ないんでしょうね」
眺めながら、蝶々の飯の心配とか。
どうしてそんな自然にしちまうかな、こいつは。
「僕、屁怒絽さんに教わって鉢植え育ててみようかな」
あまつさえ、作ろうとか。
「止めとけ。神楽に穿り返されて終わりだって」
「まさか、神楽ちゃんはそんな事しませんよ」
「悪気じゃなくてよ、多分あいつは柿の種とか植えて増やそう、とか普通にやりそうなんだよ」
「あはは、それはあるかもですね」
「そうだよ、んで生えてこないっつって理不尽な怒りぶつけられるのがオチだっての」
「神楽ちゃん専用の鉢も用意してあげようかな」
「だから生えねっつの」
「あはは」
楽しそうな新八の頭に手を置いて黒髪をくしゃりと混ぜる。
その空気を感じたのか、蝶々が翅を広げた。
「あ……」
ひらひらと舞う白いそれを、二人で暫く目で追いかけて。
「お腹いっぱいになったかなぁ」
「十分だろ」
「そうですかね」
「ああ」
白が消えるまで見送った新八は缶を手に取って立ち上がる。
「お待たせしました、帰りましょうか」
俺を見て、柔らかく笑む緩く上がった口元に。
眼鏡の向こうの黒い瞳にどうしようもなく惹かれる俺は。
蜜を求める蝶々の気持ちが、実はとてもよくわかる。



新八は膝を抱えてしゃがむイメージ。
坂田は立ち止って空を見上げるイメージ。
「銀さん、何見てるんですか?」
「んー?あの雲、美味そうだなーって」
とか。
空を見てる坂田の背中を見てると新八はいつもちょっとだけ切ない気持ちになるのです。