お小遣い
「何アルか、これ」
神楽は自分の手の平に載せられたものを見て、それをくれた銀時に問いかけた。
「見りゃわかんだろ、小遣いだよ」
見て分からないから聞いているのに、何を当たり前の事をと言わんばかりの呆れ顔を銀時はする。
少しむっとしながらも“小遣い”だという答えに神楽は改めて手の平を見た。
そこにあるのは二枚の五円玉。
もしこれが世間に通用する通貨だったとしたら、小遣いなのかもしれないとちらっとくらいは思ったかもしれない(銀時だからという事でこの際金額には目を瞑る。金であるのなら小遣いの定義には外れないだろうから)
けれど神楽の手の平に載せられているものは、確かに硬貨の形をしていたけれどできている素材はチョコとビスケットなのだ。
見てわかれという方に無理がある。
「新八がさぁ、今月の小遣いだっつってこれしかくれなくてよ」
愚痴なのかと思いきや、銀時は袋からつまみ出した五円玉を嬉しそうに口に運ぶ。
手の平に納まる小振りのパッケージはそれ自体ががま口に見えるようなデザインになっていた。
銀時の手には似合わない可愛さだ。
「銀さん今手持ちがこれしかねーのよって事で小遣い十円やるわ」
「……しょぼいアル」
たったの十円では例え本物だったとしても何も買えやしない。
「文句言うなら返せ」
「やーネ」
伸ばされた銀時の腕からかばうように神楽は手の平を胸に抱いた。
何も買えないとしても、この硬貨の価値は額面以上のものがある。
きっと銀時もそれをわかっているから分けてくれるのだ。
溶けてしまわない様に、握り締めた手の平を急いで開けば二枚の甘い五円玉。
これはきっと新八が、パチンコばかりする銀時に据えた灸のつもりなんだろうけれど。
「なんだよ」
見る顔がついニヤニヤとしてしまい、それに気付いた銀時が不審そうな表情をする。
「銀ちゃんは倖せ者アルなと思っただけネ」
「そりゃまぁ……な」
満更でもない表情で銀時はまた五円を口に入れた。
倣うように神楽も五円を食べる。
舌の上でチョコが溶け、噛んだビスケットがさくりと崩れると優しい味がほろほろと広がった。
やれ小遣いを減らすだの甘味禁止だのと怒っているけれど、結局新八は銀時に甘い。
「新八は甘いアルな」
いろんな意味にも取れるけれど。
「だな」
きっと銀時は取り違えない。
倖せそうに小遣いを減らしていく表情がそれを証明していた。
☆
がま口イラストのパッケージの五円チョコビスケットを買ったので書いてみたものです。
2015 7月補足
もんぺ