通り雨
渡り廊下から。
友達と楽しそうに帰る新八が見えた。
夕焼けこやけのオレンジ色が黒髪の上でゆらゆら揺れる。
カァ、とカラスが一声鳴いて新八が俺に気が付いた。
並んで歩く友達に別れを告げて俺のもとまで駆けてくる。
「先生」
「よぅ」
真っ黒な詰め襟はいつまで経っても華奢な身体には馴染まない。
大きめなの買いすぎなんじゃね?
「まだお仕事ですか?」
「ん、これから職員会議という名の拷問、にな」
「あはは」
「お前は友達、よかったの?」
視線をやれば遠ざかってく背中が見える。
俺に倣って新八もそれを見送った。
「タカチン達はこれからゲームセンターに行くらしいです」
「一緒にいかねーの?」
「僕は……あっ」
言葉を遮ったのは突然の雨粒。
「うっわ、新八こっち」
水滴が容赦なく新八の黒を濡らすのに、俺は慌てて傍にある細い腕を引き寄せた。
「濡れてね?」
「大丈夫です、ありがとうございます」
「ん」
陽の射す空から落ちてきたいきなりの雨粒。
生徒達は慌てふためいて、でもどこか楽しそうに走り出す。
ま、これが朝なら気も重いけど帰るだけなら濡れても別にいいもんな。
「びっくりしましたね」
「そだな」
「天気雨っていつ見ても不思議ですね」
明るい空から降り注ぐ雨を新八は楽しげに眺めてる。
「油断してっから迷惑だけどな」
「あはは、そうですね」
オレンジ色をキラキラ弾いた雨粒達は数分間で俺達の上を駆け抜けた。
残されたまん丸の水滴の中に夕焼けの色が映り込む。
「坂田先生」
「ん?」
「今日、お誕生日ですね」
「え?」
雨上がり特有の澄んだ空気と夕焼け色のオレンジの粒。
「僕、ご飯作って待っててもいいですか?」
通り雨の残した綺麗な世界に溶け込むように新八が笑った。
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