セルフサービス





三角巾に襷掛け。
いつの間にか視界に馴染んだ格好で新八がぱたぱたと動き回る。
忙しそうなそれを見て。
「新八、お茶ー」
銀時は傍らを通り過ぎるタイミングで声をかけた。
「は?」
脚を止めた新八は銀時を見はしたものの眉間に皺を寄せている。
普通はそうなるだろう。
けれど銀時は気にも留めず、その顔に向かってしれっと言い直す。
「だから、おー茶」
その様子に新八は、悪びれないこの大人の態度はなんなのだろうと深く溜息を吐いた。
「掃除中、なんですけど」
手にした箒でトンと床を突く。
「けど銀さん喉渇いちまったのよ」
「なら自分で煎れて下さい」
それがどうしたと何処吹く風の銀時に、何を言っても無駄なのだけれど。
何となく悔しいから何か言わずにはいられない。
けれど。
「だって自分で煎れても美味くねーもん」
銀時がニヤリと笑う。
「っ……」
まるでオセロの四角を取ったような余裕の笑みに新八は言葉を詰まらせた。
「っ……クソ天パっ」
新八は悪態を吐いて踵を返す。
「よろしくー」
銀時はひらひらと手を振り後姿を見送る。
足音荒く台所に向かう新八の、黒髪から覗く耳は赤かった。



早々に飲み終えた銀時は隣の新八をじっと見る。
「今度は何ですか?」
「ん?新八をぎゅってするか、新八にぎゅってしてもらうかどっちにすっかなーって」
「今日はもう銀さんの我が侭は聞きませんからねっ」
「そんじゃセルフサービスしかねぇな」
銀時の手が新八から湯飲みを取り上げる。
手首にするりと指を回して。
「ちょっ……もー」
引く腕に抗議の声をあげるけれど、細い身体は銀時の力に逆らわない。
銀時は納まった温もりをぎゅっと抱き締めた。
「あのさぁ」
「なんですか」
「素直じゃねぇのも可愛いな」
「ば……っかじゃないの!」
つって新八が坂田の身体に腕を回してぎゅってしがみ付けば可愛いと思います。