「ん……」
絡んだ舌がゆっくり解けて唇が離れる。
それでもなお、名残を惜しむように銀時の唇はついばむように触れる。
「すげー甘いな、お前」
「……ほんとに?」
「うん、すげぇ甘い」
甘いのが好きだといった銀時のために、辛くて沢山泣いた後はそれを消すくらいに頑張って笑おうと努力したのだ。
本当に甘くなるなんて思ってはいなかったけれど、少しでも銀時のために何かを頑張りたかったのだ。
「よかった」
「……けど、甘くなりすぎだ」
「え……?」
銀時の腕が背中に回って、あっと思った瞬間に訳もわからないまま新八の背中は床についていた。
「なに……?」
銀時の手がシャツの裾から指先を滑り込ませる。
けれど何もせず。
じっと自分を見つめる瞳に、銀時の言わんとすることがわかったような気がした。
「見てた」
銀時の一言に新八は泣きそうになる。
望んだ事では決してないけれど、それは酷い裏切りのような気がして。
「……ごめんなさい」
「違うって」
筋違いな謝罪を述べる新八を慰めるような瞳で見つめて銀時はゆっくりと掌を滑らせた。
少しずつ露になってゆく新八の素肌。
外気に触れて鳥肌が立つ。
あの時の、嫌悪の鳥肌とはまったく別の種類のものだ。
今触れているのは銀時で、望んでいるのは新八だから、それは全く別のものなのだ。
「お前の事助けてやれねぇ自分が情けなくて仕方なかった」
肌をなぞりながら銀時が悔やむ。
「あんなやつにお前を触らせたくなかった」
「でも、銀さんは来てくれたよ」
今こうして触れているのが銀時ならば、それでよかった。
だから、沢山の気持ちを込めてただ一言を声に乗せた。
「銀さん、大好き」
一瞬だけ見えた泣き笑いみたいな表情を隠すように、銀時は新八の肌に唇を寄せた。
わき腹の辺りからゆっくりと、胸へ向かって舌を滑らせる。
その感触に耐えるように新八の手が銀時の髪に触れた。
舌の動きを追うように甘い肌がゆるりと波打つ。
目的の桃色に辿りつくと銀時はそっと歯を立てた。
そのまま舌先で形を辿るように何度もなぞられ新八の指先に力が入る。
「や……だ」
羞恥心を誤魔化すための裏腹な言葉は銀時にとっては可愛いだけで。
ひっそりと色付いていた桃色が熟れて赤くなるまで、銀時はそこから唇を離してくれなかった。







顔を上げた銀時と目が合った。
慌てて逸らすと首の辺りまでシャツを捲り上げられた自分の胸が視界に入る。
片方の胸は銀時の唾液で濡れ光り、隣のピンクよりも一層鮮やかな色付きを放っている。
自分の胸がそんな状態になっていることが恥ずかしくて新八はすぐにシャツを下ろしてしまった。
「まだ片方しか舐めてないんだけど」
「な、舐めなくていいっ」
「なんでだよ。まだ消毒終わってねぇよ」
「そんなとこ触られてないからっ」
「そりゃ残念だ」
首筋に唇を落とされて、キュッと朱印を残された。
「もうぜってーあんな目にあわせねぇから」
「あんなのもうないよ」
「お前は自分をわかってねーの」
「だって僕男なのに」
「……おいおい、銀さんを全否定ですか」
「だから、銀さんは僕も好きだから特別で……あの人たちはきっと頭がおかしいんだよ」
こんな身体をどうにかしたいなんておかしいとしか思えない。
銀時が欲しいと思ってくれる事実は奇跡みたいに嬉しいけれど、銀時以外は絶対に嫌だった。
「銀さんは特別?」
「……うん」
「お前もずっと俺の特別だしな」
「特別の意味も、もう知ってるよ」
そう言ったら銀時はそうかと笑って、もう一度優しいキスをしてくれた。







「行くか」
立ち上がり、木刀を腰に納めると銀時は新八を振り返る。
「姉ちゃん、早く助けてやんねぇとな」
「うん。あ、ちょっと待ってて」
新八は銀時を残したまま二階に駆け上がる。
パタパタという音と共に戻ってきたその右手には金属バットが握られていた。
「……意外に過激だね」
「だって、他に武器がないんだもん、しょうがないじゃん」
「ま、俺も容赦しねーけどな。お前にぶっかけ宣言しやがったあのヤローはぜってー潰す」
「こ、殺しちゃだめだよ?」
「わーってるって。俺はお前とずっと一緒にいんだから。ちゃんとわかってるよ」
ぎゅっと抱き締められて、それから手を引かれて外に出た。
庭には一台「銀」とボディにかかれた原付が止まっていた。
「これ、俺の愛車」
「原付なの?」
「そ、空は飛べません」
にやりとしながら新八にヘルメットを渡す。
「銀さんもう普通の人だからね。地に足つけて生きてかないとね」
そう言って笑うけれど、あの森で魔法を使っていたときから銀時の足は地についていた気がする。
だって、新八を家に帰すとき以外は銀時はずっと自分の温もりで新八を慰めてくれた。
だから銀時の記憶は夢物語なんかじゃなく、ちゃんと新八の中に残ったのだ。
「これからどうするの?」
「そうねー。何でも屋とかいいんじゃねーの?」
「なら僕も手伝いたい」
「新八いくつだっけ」
「16」
「美味そう」
「なにそれっ」
「ははは、冗談……でもねーけど。そだなー、アルバイトか。でも多分ほぼただ働きだぞ?」
「いいよ。銀さんと一緒に居られるなら頑張れる。ちゃんとお金になるバイトもするから時々でも雇ってよ」
「なら銀さん癒し係でよろしく」
「……銀さんが言うとエッチな感じがする」
「だいじょーぶ。なんもしねーから……って言う方がエロくね?」
「し・り・ま・せ・んっ」
笑いながら原付のエンジンをかける銀時を一度にらんで、新八は渡されたヘルメットを頭に被った。
銀時の胴に腕を回して両手でバットを掴む。
「ちょい飛ばすから落ちんなよ」
声がかかって原付がスタートした。






4つで出会った銀時がくれたどんぐりの実はずっと新八の支えだった。
その魔法ははじけて終わってしまったけれど、今新八の傍にはずっと欲しかった温もりがある。
樫の木で作った木刀を持った元・森の妖精はただの人になってしまったというけれど新八はまだ魔法が使えるんじゃないかと実はちょっと思っている。
風に煽られた銀時の髪が新八の鼻先を擽る。
太陽の日差しを吸い込んだそれは相変わらずふわふわのきらきらで、いつだって新八を幸せにしてくれるのだ。
それは多分新八にしか効かない特別な魔法。
きっと銀時も知らない魔法なのかもしれなかった。




無事に姉を助けてめでたしめでたしならいいけれど。
きっとそれでは終わらない。
一緒に助けてくれた銀時の事をなんと説明すればいいのだろう。
『お前が大きくなって、姉ちゃんが寂しくて泣かなくてもいいようになったら銀さん呼んでくれよ、な?』
あの日銀時は泣きべそをかく新八にそういった。
でも。
また別の意味で泣かせてしまうことになりそうだ。
それを考えると新八は少しだけ頭が痛いのだった。

20070112UP


小丸さん、これが例の妄想の産物です(笑)いかがでしょうか(汗)。
えーとですね、私は言い訳の申し子なので書かせて頂きます。
これはトトロの妄想でした。
銀さん→トトロ   新八→さつき  くらいのもんだったんです。
寝てる銀さんのとこに新八が迷い込んで、んでのちに姉上がいなくなったーって泣いてる新八んとこに定春に乗った銀さんが来るわけですよ。
んで定春の首に「姉ちゃんとこ!」っていう札をかけて新八乗っけて走っていく、というね可愛い感じで妄想してたんです。しかも拍手お礼にしようと思って小話のつもりで。
……わたしはどこで何を間違えたんでしょうか……。
そして、何か大切なものを捨ててしまったような気がします(笑)
ジブリ方面に向かって土下座します。ごめんなさい。
ちっちゃい新八とか、ですます口調じゃない新八とか六歳の妙ちゃんとかいっぱい難しかったんですけど、でもなんか楽しかったです。
4歳児の思考なんてわからない。でも全部、新八だから、でご納得いただければ幸いです。
書きながらねー、私は人でなしだ、と思ったですよ。新ちゃんを汚してしまった。あわわ。
銀さんにぶっ潰されます(汗)
気に入っていただけるかどうかめちゃくちゃ不安なんですが(汗)どうぞ……てかもう読んじゃいましたね。始めに注意書きを付けとこう。
では、どうもありがとうございました。

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