まるで吸血鬼みたいに
君のやさしさを
吸い尽くしてしまう
気がするんだ
「あれ、先生白いシャツなんて持ってるんですね。着てるの見たことないですけど、式典用ですか?」
脱いだジャケットを仕舞うためにクローゼットを開けた新八が扉に手をかけたまま俺を振り返る。
「んー、式典用つーか、特別な日用つーか」
俺は基本色シャツしか着ない。
白衣が白いから一応カラーコーディネートなんてものを考えてのことだったりなかったり。
ま、滅多に白なんて着ないわけ。
だから俺のクローゼットの中は結構カラフルで、そこに一点存在する白は一目でわかるほど目立つ。
それを見つけた新八の質問を受けて俺はこっそり唇を引き上げた。
着もしない白シャツを、購入した理由は簡単で。
近付いた俺は背中から新八を腕の中に閉じ込める。
「特別、ですか?」
「そ、特別。着てみる?」
腕の中の”特別”に問いかけた。
「僕が、ですか?」
「うん、だって新八用だもん」
「え?」
この白は俺が着るためじゃない。
新八に着せるためのものだ。
こないだ雨で濡れちまった日に俺の服着せたのがやばかったんだよな。
あの日から頭の中で育ちまくる妄想。
白のシャツなんて制服の下のカッターシャツで見慣れてるけどそれとは全く別もんだ(それはそれでいいけどな)。
俺のサイズを新八が着るってとこに大きな意味がある、というくだらなくも崇高な、憧れっつーのかね。
気がついたら購入してました。
「僕がこれ着たら、先生は楽しいんですか?」
ハンガーにかかったシャツの袖を新八の指が摘む。
今新八は自分の身の丈にあった、自分のシャツを着てる。
俺は少し俯いた小さな頭に顎を乗せた。
「楽しいよ?新八は嫌か?」
嫌か?なんてとんだ愚問だ。
こんな変態染みた話、敬遠したいに決まってる。
わかってて聞く俺も相当性質が悪い。
でも新八の反応をみる事も俺にとっては楽しみの一つ。
やだって泣くのも可愛いし、怒らせちまったらどう宥めようか考えるのも楽しいし。
新八のいろんな顔を見るのが楽しくてたまんねー訳ですよ。
俺の我侭をどこまでも許容する新八に、甘えすぎてる自覚はあって。
だからいっぺんガツンとくらっとこうかと思う部分もあるわけだ。
どう転んでも離す気はねぇよ、ってな確固たる意思を持って俺は地雷を踏みに行く。
なのに。
「僕が着てもきっと……先生つまんないですよ」
新八の優しい手が俺を守るために地雷を撤去した。
「だって、胸とかないし……」
声は申し訳なさそうな色すら含んで。
たまらなくて俺は細い身体を思い切り抱き締めた。
「ったくお前はよぉ……どこまで俺を許しちゃうの?」
頭頂部から顎を滑らせて耳朶を含んで首筋に落ちる。
新八の手が、身体に回った俺の腕をぎゅっと掴んだ。
「別に、許してなんか……」
こんな大きな無償の愛を俺は知らない。
きっと一生かかっても、この気持ちを新八に伝えるのは難しいんじゃないかと思う。
現国教師の名折れだね。
「新八」
「なんですか」
指先で細い喉を撫で下ろし、俺は上からゆっくりとボタンを外していく。
二つ外して鎖骨を撫でると柔らかな髪が顎を擽った。
「シャツ着て、今から一緒に風呂入って」
「い、一緒に、ですか?」
「うん、そ。一緒に」
突っぱねられない事に頬は緩むけど、別の意味でも更に緩む。
新八君、突っ込むとこはそこでいいの?
暫く無言だった新八はやがてごそりと身体を捻る。
くるりと俺の方を向いて、胴にぎゅっとしがみ付かれた。
「こんな、身体でいいなら……」
俺は何もいえなくて、背中に回した手で布を掴む。
肌蹴たシャツは簡単に緩んで新八の優しい肩を眼前にさらした。
薄い皮膚に唇で触れる。
「この身体しか、いらねぇよ」
同じ性を持つ肉体、だけど形は関係なくて、中に宿るものが新八であるのなら俺にとっては何より愛しい。
愛したくてたまらなく、なる。
「新八、いっぱい愛させて」
囁けば、なだらかな背中がやわらかく揺れた。
新八の、声とシャツが浴室の中で濡れていく。
白を通して透ける裸体は甘く艶やかに俺を誘う。
黒髪から伝った雫が首筋を滑って。
恥らうようにうっすら色付く桃色に、俺の理性は焼ききれそうだった。
終わり
20070621UP
小丸さんのコピ本「skip」に触発されて湧いた頭で書きました。
小丸さんに捧げるために書きましたが、快諾していただいたのでサイトに掲載いたします。
新八君が先生のシャツを着るというのはなんだかもうたまらないものがあります。
先生は残念ながら(笑)この時点ではまだ本懐は遂げていません。
私の中に話はあるのでそのうち形にできたらいいナとは思います。
坂田先生は万事屋銀さん以上に忍耐を強いられるのかもしれません(笑)。
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