結局、猿飛はあの後もなんだかんだとわけのわからない理屈を並べて自分の世界を展開し続けた。
俺が冷たいのはプレイじゃねーっての。
キモイ事言ってんじゃねぇよ、ったく。
新八ときたら、絶対に学校には言わないで欲しいって、俺の心配ばっかりするし(可愛いったらねーよ)。
猿飛は、学校に言う気は全くないらしい。
まあ悪い奴じゃねんだけどもな。
諦めてないから!とかって捨て台詞を残していったけど、あいつあと一週間弱で実習終わりだってわかってんのかねぇ。
願わくば、あいつがこの学校に採用されませんように。
さてと。
「新八君」
名前を呼んで。
腕の中の新八の首筋に唇を寄せた。
いつもは制服の襟に隠れてる健康そうな首筋が、今日はパーカーの襟元から惜しげもなく覗いてる。
触れて、軽く吸い上げると腕の中でかすかに身体が揺れた。
「今、先生がどんくらい幸せか、とかってわかってますか?」
猿飛には悪いけど。
あいつのおかげで新八の気持ちを改めて確信することが出来た(俺だって強引なウラには繊細な心が隠れてたりすんだって)。
身体に回した手を服の裾からしのばせる。
パーカーをくぐって、下に着たシャツをジーンズから引き出す。
「せ、先生……」
「ん、ちょっとだけ、な?」
添えられる新八の手は俺の動きを止めるほど強くはない。
だからそれを柔らかく拒んで、そのまま初めて触れる新八の肌に指を滑らせた。
女とは違う。
でも新八の肌は俺の指先を柔らかく受け止める。
するりと滑らせて、探り当てる。
指の腹で丸く撫でるそこは、多分ピンク色。
「や……ぁっ」
数回撫でただけで簡単に立ち上がったそれを摘んでやると新八が跳ねる。
すげー、感じやすいんだな。
それとも。
俺だから、って自惚れてもいいんかな。
そんなこと考えながら指先で感触を楽しんでたら。
新八に止められた。
自分の服の上から俺の腕を止めるように押さえる。
「せん、せ……も、やです……」
新八にはかわいそうだけど、ちょっと見上げてくる涙目の訴えは俺には逆効果にしかならない。
「何でそんなつれない事言うかねぇ」
「だ……って、あ、んっ……恥ずかし……から」
腕の中の、身体の震えが愛しくてたまらない。
「もっと恥ずかしい事、一杯したいんだけど?」
目の前に晒されてる首筋に口付ける。
「わかって、ますけど……でも、がっこ……だから……」
そだったな。
学校では我慢するって、約束したもんな。
それなのに、ここまで許す新八の深さに眩暈すら感じる。
「だから。やだったら殴っても蹴ってもいいって、いったろ?」
服の中から手を出して、上から軽く抱き締める。
「……出来ないですって、言ったじゃないですか」
拗ねる新八は珍しい。
可愛くて、嬉しくて。
膝の上の新八を90度回して横抱きにした。
腕を首に回させて。
「あぶねーから、ちゃんと捕まっとけよ」
「?」
一気に服をたくし上げた。
「先生っ?」
晒された白い肌に仄かな色付き。
思った通り、すげー可愛いピンクだよ。
そのまま、誘われるように舌で触れた。
さっき指で立ち上げた先端を舌先で弄る。
「せん……せ、やだ」
甘い、新八の体温。
触れた舌先に、早鐘のような鼓動が伝わってくる。
伝染しそうな新八のドキドキに毒されそうだ。
音がするように、ちゅっと強く吸い上げる。
「は……んっ」
そうしたら。
ばすっと頭をはたかれた。
顔を上げれば涙目の新八。
それを見て俺はにやりと笑う。
「やればできんじゃねーか」
全然痛くねぇけどな。
も一度ピンクにキスをして、たくし上げた服を戻してやった。
「新八、怒っちゃった?」
名前を呼んで、じっと見詰める。
潤んだ目元がかすかに赤い。
待ってると、新八の手が俺の両肩にかかって。
優しいキスをそっとくれた。
「それにしても、絶妙のタイミングだったな」
駐車場に止めた原チャの後ろに新八を座らせて、俺はポッケに手を突っ込んで傍らのポールに凭れる。
猿飛とあの話をしてた時、新八は本当に絶妙のタイミングで飛び込んできてくれた。
「忘れ物して、学校に来たんですけど。校舎に入るとき職員室の窓から先生がいるのが見えたから」
きっと一人残ってノートの山を前にぼんやりしてた時だろう。
「終わるの待ってようと思ったら、話し声が聞こえてきて……聞くつもりはなかったんですけど、気になって」
きっと新八は心配だったんだろう。
そりゃそうだよな。
俺達の関係は公には出来ないものだから。
「あん時、新八が助けてくれて、すげー嬉しかったんだけど、この気持ち、わかる?」
「助けたなんて……だって先生が学校辞めるなんて事になったらやですもん」
「辞めねーよ。新八が身体張って助けてくれたんだもんな。これからはちゃんと気を付けっから」
悲しいかな、俺達の関係は……まぁ、俺のやってることは、だけど、犯罪だ。
ただ好きだってだけなのに、それが罪になる事の意味は良くわからない。
好きだけじゃ、渡っていけない世の中なのね。
「新八、先生頑張っからな」
ポールから身体を起こして座る新八の両脇に軽く手をつく。
「僕も。さっちゃん先生にとられないように、頑張ります」
真面目な顔でそんな発言をする新八の唇を俺はキスで塞ぐ。
「ん」
「あんなぁ、それは天地がひっくり返ってもないから。先生、新八君にメロメロなんですけど?」
「でも……」
普通の目で見たら、猿飛あやめはいい女なんだろう(まあ性格は別だけど)。
出るとこ出てるし、いかにも女って感じの。
多分新八が気にしてるのはそういうことなんだと思う。
そんな心配する必要は全くない。
けど、それを新八に求めるのも酷な話だ。
「さっきいっぱい舐めてやったろ?」
もう一度、今度は少し長いキスをして。
「いつか。そんな心配吹き飛ぶくらい、ちゃんと身体に教えてやっから、な?」
鼻先と額に口付けて。
「……うん」
首筋にしがみ付く、新八の身体を支えて薄い背中を数度撫でる。
ぽんぽんと二回叩いて身体を離した。
「今日、これから時間作れるか?」
新八の頭にメットを乗せて尋ねた。
せっかくの機会にこのままこいつを帰しちまうなんて勿体ねぇし。
「十時くらいまでなら」
「姉ちゃんいねぇの?」
「今日は友達と飲み……あっと、食事してくるって」
弟残して飲みに行ってんのかよ、あの女。
けど自分では払わねんだろな。
それに引き換え……ホント、真面目な子だね。
「別に俺相手に誤魔化さなくてもいいって」
メットの上から軽く頭を叩く。
「んじゃ、デートすっか。何時まで先生にくれる?」
「あ……っと、帰って宿題やりたいんで……九時、くらい」
俺は時計に眼をやる。
もう七時半を回ってる。
一時間弱、か。
「新八、飯は?」
「まだです。忘れ物思い出したから……帰ってから食べようと思って」
「じゃあ、なんか食いに行くか。奢ってやるよ」
新八をきちんと原チャに跨がせてスタンドをあげる。
「でにいすだけどいっか?」
「は、はい」
「ん」
原チャに跨る俺の身体に新八の腕が回る。
キーをまわすと思いの他エンジン音が響き渡った。
私服の新八とのデートに俺は結構浮かれてて(だって初詣以来だ)。
「ぎゅーってしとけよ」
肩越しに振り返って目が合えば、馬鹿正直に力が込められた。
あーもー、ぜってーこいつ俺以外に触らせたくねんだけど。
伝わる背中の温もりに、嬉しくも複雑な感情が絡まった。
早く俺のモンにしてーなぁ、とかいろいろな。
ああ、今夜も悶々としそうだね。
ごめんな、新八。
今夜もお世話になります、なんてな。
けどこれ、正直に言ったら新八許してくれちまいそうなんだよなー。
今度言ってみる?言ってみちゃう?
それもまた凄い誘惑。
楽しそう。
こんな甘ったるいの、俺には一生縁のないもんだと思ってたけど。
本当の自分、デビュー。みたいな?(笑)。
ま、新八限定だけどな。
超えなきゃなんねぇ山はあるけど、新八背負ってでも乗り越える覚悟は俺の中にある。
こんな風にしがみ付くばかりじゃなくて、駄目な俺を引っ張ってくれる強さも新八の中にはちゃんとあって。
俺たち、なんかすげーいいんじゃねぇの?
もうホント、諸手をあげて万歳したい気分です。
会えてよかったなんて柄にもなく。
言って、抱き締めて、キスしてぇ。
この気持ちの持って行き場がわかんなくて、俺は思い切りスロットルを回した。
湧いたエンジンに、背中の温もりが驚いたようにちょっと揺れる。
安心させるようにその手に一度触れて。
そんじゃ行きますか。
新八君との夜のデート。
でにいすに向けてレッツゴー、ってね。
布越しの体温をちょっとだけもどかしく思いながら、俺は愛車をスタートさせた。
おわり
20070315UP
20101107加筆修正
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