3Z遊園地3(サイト3Z)
「おもちゃみたいで可愛いですね」
公園のベンチ。
隣に座った新八が茂み越しの観覧車を見上げながら呟いた。
遊具のある広場と最高額100円の、1000円もあれば豪遊できるようなチープな遊園地が併設された公園施設。
周りはみんな親子連れってなラインナップの中に、俺達はいる。
街中に突然緑が溢れるこの場所は春休みのおかげでそれなりに賑わってる。
けど、どこか裏寂れた雰囲気漂う異質な空間。
空を飛ぶ栗鼠や小振りな回転木馬、一番人気らしい警笛代わりにベルの鳴る蒸気の出ない機関車。
その中で際立ってるのが遊園地のシンボル「観覧車」。
全部が手のひらサイズみたいなこの中で、それは小さいながらも存在を主張して。
「鳴らないのかな」
「何が?」
「観覧車」
緩やかに回転を続けるゴンドラを見つめたままの突拍子もない台詞。
「……観覧車は鳴らねぇだろ」
「でも、風が吹いたらカランって鳴りそうですよね」
冗談かと思ったら、新八は割と真面目な顔をしてた。
新八に倣って俺も見上げる。
本格的なものよりは遥かに小さいそれは一周10分もかからないんじゃねーかと思う。
円を縁取るカラフルなゴンドラは新八が言うとおり玩具みたいで、赤ん坊の持つガラガラを思わせる。
「ホント、玩具みてーな」
少し雲のかかった空を背に、眠りに誘うようなスピードで。
あんな玩具みたいな頼り無い箱でも、切り取られた空間は誰もいない空まできっと俺達を運んでくれる。
それはちょっとした誘惑。
「そんじゃちょっくら玩具の国に行きますか?」
立ち上がって手を引けば、座ったままの黒い瞳が不安に揺れた。
そういや高いとこ、苦手だっけ。
「センセと一緒でもやっぱこえーか」
失笑覚悟で言うなら「逃避行」みたいなね。
そういうセンチメンタルな気分に、ここはさせる。
恥ずかしい俺の手を、ぎゅっと握り返して新八が立ち上がった。
「先生だけ見てたら、きっと平気ですよね」
風が吹いて。
髪を揺らした新八が、綺麗に笑う。
ゴンドラが、カランと鳴った気がした。
逃避行の10分間。
見つめあったりはしなかったけど。
並んで座って指を繋いで。
目を閉じた新八の体温を、俺はずっと感じていた。
終
※収納するにあたり読み返したんですが……新ちゃん、先生見てなかった(笑)
きっと十分に見詰め合った後だったりしたんだと思ってください。