目隠し




「ぎ、銀さんホントは見えてるでしょ……」
「見えてねぇって」
「嘘ですよっ、だって……」
「だって……?」
銀時の目は今布地の向こう側にある。
閉じた瞼の上に、新八自身の手で巻きつけたのだから間違いはない。
それでも。
眼球を塞いでいるはずの瞼も、布地さえも突き抜けて自分を見つめる銀時の視線を、新八は強く感じるのだ。
「眼鏡、危ねぇから外しとけよ?」
言われるままに外した眼鏡をコトリと置けば、それを合図に銀時の手が伸びた。
身体にそっと触れた掌が、両側からゆっくりと登ってゆく。
新八の、形を辿るように布地の上から丁寧に滑るそれは、肩を撫でて首筋へと移る。
更に上がった掌に両頬を包まれた。
長い指がそっと顔のパーツに触れていく。
いつも迷いのない器用な手の、少しだけたどたどしい動き。
それが何故か少しだけ寂しくて。
指先が唇をなぞった時に新八はそっと口を開いた。
自然と中に入る指先をやんわりと歯で噛むと銀時の動きが止まる。
「どした?」
止められた手はそのままに、もう片方の指先で銀時が唇に触れた。
噛んだ方の指先をそっと舌で舐めると新八は指先を開放した。
「……寂しい、です」
布越しに、こんなにも強く銀時の視線を感じるのに。
見詰める先で目線が合わないことが寂しくて堪らない。
新八は、伸ばした腕で銀時の目隠しを取り去った。
はらりと落ちた布の向こうで銀時の瞼がそっと開く。
その強い視線に、ひどく安心するのを感じていた。
「さっき、見えてるとかって疑ってなかったっけ?」
「だって……」
布越しに視線を感じたのは本当の事だ。
ただ、銀時の「目」が自分を見つめていないという事実が寂しかっただけなのだ。
「まあなー。俺も新八の事、見えてるほうがいっけどな」
伸びた手がくしゃりと髪をかき混ぜる。
いつも通りの淀みのない動き。
それだけの事に新八はただ安心をする。
そっと触れるだけの口付けをされて。
「多分俺、目だけで新八の事犯せると思うんだよな」
口端をあげて、そんな告白をされて。
新八は身体が熱を帯びるのを止められなかった。